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第520回 暫くは日銀サプライズの波及効果を見定めたい…

2016年02月01日

 ほんの1週間ほど前まで、日銀の黒田総裁はマイナス金利導入の可能性を何度も何度も強く否定していた。つまり、良かれ悪しかれ黒田総裁は明らかにサプライズを狙ったわけである。肝心なのは、それが黒田総裁自身も「重要」と述べている「何でもやると示すことで人々のデフレ心理の転換を進めること」につながるかどうかである。つまり、ここはマイナス金利導入の負の側面などを取り沙汰することなどが本題ではない。政府による金融政策への依存が大いに問題視されることや、市場で「日銀限界説」が囁かれていることなどは百も承知である。


 むしろ、今後注視して行かねばならないのは、黒田総裁の英断が欧米の金融政策の方向性にも影響を及ぼすことで、年初からの世界的な連鎖株安に一定の歯止めがかかるかどうか(投資家心理が改善するかどうか)という点、あるいは国内の企業経営者や消費者の心理を再び上向かせることができるかどうかという点などであろう。

 実際、今回の日銀の決定によって、市場では競争的な通貨切り下げが再び起きるとの見方が拡がっている。「それが強引な為替介入ではなく、大胆かつ適切な金融政策の導入によってもたらされるのであれば、世界経済全体にプラスサムの効果をもたらす」という過去の有名な論文もある。メディアが伝えるところによれば、日本の経済界からも今回の日銀の決定を概ね歓迎する声が出ていると言う。経団連の榊原会長は「企業心理を改善させる効果はある」、「結果として賃金、設備投資にプラスの効果も期待できる」と語っている。結果として、今春の労使交渉が少しでも組合側の満足度を高めるものとなり、人々の賃上げ期待が露と消えてしまわないように運ぶことを心から祈りたい。


 振り返ると、消費者庁が先に発表した今年1月の物価モニター調整では「今後3カ月の消費支出について、昨年の同期間と比べて、どのようにしていこうと思っているか」という問いに対して「減らそうと思っている」との回答が大きく比率を伸ばしていた。その理由として挙げられたもののうち「保有している金融資産・不動産等が値下がりすると思うから」という回答が急増していたことも事実である。当然のことながら、やはり消費者の心理は株式や不動産の価格見通しによっても大きく左右されるのだ。


 先週末29日の日経平均株価は前日終値比476円高となり、欧米市場でも主要な株価指標・指数は軒並み大きく上昇した。NYダウ平均は400ドル近い上昇となり、CME日経平均先物も週末29日の大証終値比で225円の値上がりとなった。

 株高を背景にドル/円、クロス円も大きく持ち直し、ドル/円は一時121.69円と昨年12月18日以来の水準まで値を戻した。結果として、一時的にも200日線を上抜け、終値でも89日線を上抜ける展開。さらに、先週の週足ロウソクは62週線を終値で上抜けた。結果、チャートフェイスが大きく変化したことは間違いない。まずは、とりあえず120円の大きな節目を超えてきたことが大きい。目先は200日線を明確に上抜け、さらに一目均衡表の日足「雲」上限を上抜けるかどうかに注目したい。

 今後、ひとまず日経平均株価は1万8千円台を試す展開となる可能性が高いと見られるが、2016年3月期予想をベースとするフェアバリューは1万8400円処と考えられることから、そろそろ戻りは限られてきてもおかしくない。日経平均株価が戻り一巡となれば、ドル/円も再びもみ合いとなる可能性がある。日銀のマイナス金利導入は確かにサプライズであったが、暫くはその波及効果を慎重に見定めて行く必要があろう。

(02/01 09:15)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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