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第528回 “ドル高の修正”もそろそろ一服?

2016年04月04日

 先週29日に行われたイエレン議長講演をきっかけに、それまでやや強気の流れにあったドル相場は一気に弱気へと転換した。講演では追加利上げを慎重に進める姿勢があらためて強調されたわけだが、どうやらその背景には「米国経済は底堅く推移していると判断されるものの、なおも世界経済の鈍化リスクは高いため、追加利上げには慎重にならざるを得ない」との思いがあるようだ。

 実際、先週28日に発表された2月のPCDコア・デフレーターは前年同月比+1.7%と必ずしも弱い結果ではなかった。「事前の市場予想に届かなかったのでややネガティブ」との評もあるようだが、昨年まで1%台前半から半ばあたりで推移していた同指標が今年に入って1%台後半にまでレベルアップしてきたことは素直に好感できるものと思われる。米国政府・当局が目標とする2%+αの水準には「あと一歩及ばない」が、見方を換えれば「もう一歩の水準まで改善してきた」とも言える。

 1日に発表された3月の米雇用統計を見ても、平均時給が前年同月比+2.3%という結果は十分に評価していいものと思われる。さらに、同日発表された3月のISM製造業景況指数も51.8と前月の49.5から大きく上昇した。何より、景気判断の分岐点である50を半年ぶりに回復した点は大きい。


 それでも、足下の市場ではドル売りが依然として優勢の展開となっており、ドル/円は一時111円台半ばの水準まで下落、ユーロ/ドルは一時1.1438ドルまで上昇する場面を垣間見ている。現時点においては、なおも海外経済の鈍化リスクに対する警戒を緩められないということなのであろう。

 先週31日付の日本経済新聞は「世界経済の下支えへ日米欧が政策協調しているとの観測も浮上している」と報じた。実際、2月下旬に上海で行われたG20財務相・中央銀行総裁会議が閉幕してからというもの、俄かに日米欧の金融政策には政策協調とも取れる動きが目立つようになっている。そして、目下はG20容認の下で“ドル高の修正”がじりじりと進んでいるように見られる。

 とはいえ、3月を通じて新興国からの大量資金流出に伴う世界経済不安定化のリスクがかなり大きく後退したことも事実である。3月に入ってからのドルは主要31通貨すべてに対して下落し、ロシア・ルーブルやブラジル・レアルまでもが対ドルで値上がりするなど、新興国通貨全体が大幅高の展開となっているのだ。

 そこで注目しておきたいのは、まず4月14-15日にワシントンで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議の行方である。焦点は、その場において「世界経済のリスクが一頃よりも大きく後退した」との認識を各国が共有することとなるかどうかである。そうした認識が共有されれば、日米欧の金融政策には一定の自由度が生まれることとなり、さしあたって4月26-27日に予定されるFOMCの声明内容も、これまでよりは少々タカ派的な色合いを帯びたものとなる可能性がある。


 その意味で、前述した“ドル高の修正”もだいぶイイトコロまで来ているのではないだろうか。足下でドル・インデックスは94ポイント台半ばあたりまで低下し、いまだ93ポイント程度までの低下余地はあると見られるものの、そろそろ一旦底入れしてもおかしくない。なおも、ドル/円は極めて重要な節目である110円処の水準を試す可能性があるものの、そこは一旦下支えされる可能性が高いと見られる。一方、ユーロ/ドルは昨年10月15日高値の1.1495ドルを試す可能性があるものの、やはり1.5000ドルの壁はそう簡単に破られないものと思われる。

(04/04 10:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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