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第537回 衝撃の米雇用統計~市場の反応は少々過剰!?

2016年06月06日

 先週3日に発表された米雇用統計の衝撃は周知のとおり。その後の市場の反応は致し方ないものと思われるが、正味のところ少々“過剰”であるとも思われる。よって、まず当面は衝撃の結果となった原因を詳細に分析・究明することが肝要であろう。

 市場関係者のなかには「今回の雇用統計は何らかのエラーによる異常値である可能性がある」、「6月の雇用統計では過去発表分が上方修正される公算が大きい」と見る向きもあり、少なくとも今回の結果にのみ重きを置いて、安易に「米景気は後退局面に突入する」、「ドルの反発局面は終わった」などと判断するのは早計に過ぎるだろう。

 今回、非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが急激に鈍化した原因の説明を、米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズで発生したストライキの影響だけに求めるのは、たしかに無理がある。とはいえ、5月の失業率が4.7%と8年半ぶりの低水準に急低下したことも事実であり、ほぼ“完全雇用”と言える状態に接近したことがNFPの伸び鈍化の一因となっている可能性は高い。

 筆者を含め多くの市場関係者が“より注目度が高い”としていた「平均時給」も前年同月比+2.5%と順調に伸びており、総じて米雇用情勢は“新たな局面を迎えた”と見るのが適切であろうと思われる。


 もちろん、これで6月米利上げ観測は急激に後退するだろうが、もともと6月と見る向きは少なかった。今後は「7月の利上げも難しく、早くても9月」との見方が強まって行くものと思われるが、もともと5月前半あたりまではそうした見方が大勢を占めていたのである。

 結果として、ドル/円は5月初旬に一時105.55円まで下押す場面を垣間見たわけであり、今回も当面の下値の目安は同水準程度ということになろう。もちろん、市場は個々の材料が発するメッセージをとかく“曲解”するものであり、今後のムード次第では一段の円高方向に一時的にも振れる可能性はあろう。思えば、5月18日に公表された4月開催分のFOMC議事録の内容も市場によって曲解され、俄かに米早期利上げ観測が強まったわけである。

 しかし、5月に一時105円台半ばまで“ドル高の修正”が進んだことで、一旦は新興国通貨が急騰し、新興国の経済状況が大きく改善したことも忘れてはならない。ドル安が進むほど、米国経済を取り巻く状況は改善し、将来的なドル高の芽が育まれるのだ。

 なお、本日(6日)はイエレンFRB議長の講演が予定されており、その内容が大いに注目される。先週末の米雇用統計発表後から引き継がれる市場のムードに変化が生じる可能性もないではない。状況が状況だけに、イエレン議長も講演の内容には相当神経を使うことであろう。少なくとも、前回(5月27日)の講演は“タカ派寄り”であると市場では受け止められた。


 かねて、筆者は今年の夏場から秋口にかけて円高・ドル安&日本株安の局面が最終段階を迎える(≒ドルと日本株がともに大底をつける)と考えてきた。その意味で、ここから暫くの間、5月に生じたリバウンドの反動が見られてもまったく違和感はない。正直に言えば、むしろ5月のリバウンドの方にこそ多少の違和感があったわけで、あらためて相場と向き合う姿勢をリセットして臨みたいと考える。

 肝心要の米国経済は成長加速の“前夜”であることに変わりはなく、その間にドルの押し目をしっかり拾っておきたい。目先、市場のムードが変化したことで、日銀の追加緩和期待が市場で蒸し返されるかどうかにも注目しておきたい。

(06/06 08:55)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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