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外貨投資 転ばぬ先の智慧

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第545回 強めの米指標と欧州銀不安でドルに上値余地

2016年08月08日

 7月の米雇用統計が事前予想を大きく上回る強めの結果だったことで、市場においては年内の米利上げ観測が再び持ち直しつつある。

 非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが前月比+25.5万人となった今回(7月)の結果はもとより、前回(6月)の結果が速報値の+28.7万人から+29.2万人に上方修正されたことも強いインパクトと言える。また、労働参加率が引き続き上向きで、平均時給の伸びが前年同月比で前月並みの+2.6%となった点も前向きに評価される。

 さらに、先行的な指標とされる「派遣社員らの一時雇用」が7月も6月に引き続いて大きく伸びている。先行指標と言えば、アトランタ連銀が独自に調査する「賃金上昇トラッカー」の6月の結果が前年同月比+3.6%と一段の伸びを示している点も見逃せない。


 結果、先週末5日のNY市場ではドル/円が一時102円台に乗せる動きとなり、先週の週足は“やや長めの下ひげを伴う小陰線”となった。この足形が週足で示現した翌週の相場が大きく崩れるということは過去にあまり例がない。悪くても横ばいといったところであり、むしろ市場の米利上げ観測の盛り上がり度合いによっては、ドル/円の上値余地が少々拡がる可能性もあろう。

 ひとたび102円台で根固めする展開となれば、とりあえず一旦は102.80-103.00円あたりのゾーンを試しに行く可能性もあるものと見られる。今週12日に発表される7月の米小売売上高や8月の米ミシガン大学消費者信頼感指数などが強めの結果であれば、7月の日銀会合後につけた104円近くまでの上値を試すこともあり得るだろう。


 いずれにしても、今週以降、9月初旬あたりまでは欧米の各政府&関係機関が本格な夏季休暇に入ることもあり、当面は新味の材料が出てきにくい。次の大きな材料になり得るとして市場が関心を寄せているのは、8月下旬にジャクソンホール(ワイオミング州)の会合で行われるイエレンFRB議長の講演内容である。周知のとおり、6月下旬のブレグジット・ショック後に行われた7月のFOMCは議長の記者会見がなかった。それだけに今回のジャクソンホールは、いつにも増して注目度が高まりやすいものと見られる。

 思い起こせば昨年は8月上旬に例の「人民元ショック」が市場を駆け巡り、その影響と混乱が10月半ばあたりまで続いた。例年8月や9月というのは、市場全体にとって「あまりロクなことがない時期」という印象もある。月並みだが、市場参加者が減る分だけ市場価格が上下に振れやすくなる可能性もあり、その点は再認識しておきたい。


 米雇用情勢の改善によって米景気の先行きに安心感を安心感が拡がりつつあることから、当面のユーロ/ドルの値動きは頭打ちになりやすいものと見られる。もともと、市場ではイタリアの銀行に対する不安がくすぶり続けており、最大の不良債権処理案件を抱えるモンテパスキの株価は依然として足下で下がり続けている。近い将来における公的資金の投入は不可避と見る向きも多く、そうなれば信用不安が高まりやすくなり、一時的にも市場全体が少々混乱することとなろう。

 ユーロ/ドルは先週2日に一時1.1234ドルまで上昇する場面があったものの、結局は一目均衡表の日足「雲」に上値を押さえられる格好となった。実のところ、日足「雲」の上方には昨年12月3日安値と今年3月10日安値を結ぶ以前のサポートラインの延長線が位置しており、同ラインは7月5日高値がそうであったように、強く上値を押さえる存在として意識されやすい。先週の戻り一巡から、目下は下値リスクに対する警戒を強めたい状況にあると考える。

(08/08 08:55)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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