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第548回 ドル/円のチャート・フェイスは底入れからやや強気へ!?

2016年08月29日

 やはり、あくまで市場が拘ったのは「9月」というワードだった。結局、先週26日にジャクソンホール(米ワイオミング州)で行われたイエレンFRB議長の講演においては9月利上げについての具体的言及はなされなかったものの、後にフィッシャーFRB副議長が9月利上げは可能との認識を示し、そちらの方に市場は強く反応することとなった。
 議長と副議長という立場の違いもあるのだろう。イエレン議長が「この数カ月で追加利上げへの説得力が増した」というより広範な話をし、その後にフィッシャー副議長が「8月の米雇用統計はFOMCの決定に影響する。イエレン議長の発言は9月利上げの可能性と整合性がある」と述べ、より具体的な部分に踏み込んだ。
 周知のとおり、この2週間ほどの間は複数の米地区連銀総裁から9月を含めた“米利上げ時期接近”を匂わす発言が相次いでいた。ダドリーNY連銀総裁の発言あたりから始まって、最後はフィッシャー副議長へと順にバトンが繋がった格好である。

 かくなるうえは、まず9月2日に発表される8月の米雇用統計の結果に注目し、仮に強めの結果であったなら、いよいよ9月利上げの可能性も徐々に織り込んで行かねばならなくなる。本来的には、雇用情勢の改善だけが利上げ判断の決定打というわけでは必ずしもないのだろうが、とりあえず市場の関心はそこに集中せざるを得ない。
 正味のところ、現状では「さほど利上げを急ぐ必要などないのではないか」とも思われるのだが、金融当局の政策運営においては“人々の期待に訴える”ということも非常に重要であると思われる。「当局は利上げに前向き」という姿勢を示すことで人々が景気の先行きに安心や期待を抱き、徐々に消費を積極化することによって物価や金利がジワリ上昇し始め、結果的に景気が一段と上向いて行く可能性も十分にある。

 フィッシャー副議長の発言を受けて、米10年債利回りが1.63%前後まで大きく上昇したことも注目に値する。振り返れば、6月のブレグジット・ショックで一旦大きく落ち込んだ米10年債利回りだったが、7月初旬以降は徐々に下値を切り上げ、先週まで三角保ち合いを形成するような格好となっていた。その間、暫く1.58-1.60%あたりのところが上値の壁となっていたわけだが、ここでついに1.60%を上抜けてきた。
 当面の展開のなかで1.60%を明確に上抜ける動きが明確となれば、とりあえずはブレグジット・ショック前の水準=1.75%処が意識されるようになろう。ちなみに、ブレグジット・ショック前のドル/円の高値は106.80円であった。今となっては、それも少々遠い目標ではあるが、とにもかくにも当面は今年1月29日高値と5月30日高値を結ぶレジスタンスラインを上抜けるような展開となるかどうかに、まずは注目したい。

 結果として、この8月のドル/円の月足がまたも終値で62カ月線を下抜けずに推移する可能性が高まったことも大きい。6月、7月、8月と続けて62カ月線がドル/円の下値を支える格好となることは、そのサポート力が一段と強まるということでもある。
 まして、9月、10月以降は一目均衡表の月足「雲」上限がいよいよ水準を切り上げはじめる。そのチャート・フェイスからしても、徐々にドル/円は底入れからやや強気へとムードが切り替わりやすくなるのではないか。

 もちろん、8月の米雇用統計が期待外れの結果に終わる可能性もあり、ここであまりドル強気のイメージを膨らませ過ぎてもいけないのだろう。引き続き慎重に向き合いながらも、状況の変化には敏感に対応して行きたい。
(08/29 08:50)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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