先週末2日に発表された8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが前月比+15.1万人と事前の市場予想には届かず、平均時給の伸びも前年同月比+2.4%という水準に留まった。その結果、発表直後は一旦大きくドル/円が売り込まれる場面もあったが、ほどなく一気に買い戻されて一時は104円台乗せる場面もあった。
様々な解釈があろうが、前月(7月)分のNFPが27.5万人に上方修正され、6月と7月を合わせて54.6万人となったことは、まず前向きに評価していいだろう。その反動が8月に出たという見方もできるだろうし、「8月のNFPは事前予想を下回ることが多いものの、後に上方修正されることも多い」というアノマリーもある。
平均時給の伸びは少し鈍化したが、前月分が前年同月比+2.7%に上昇修正されたという事実も見逃せない。少なくとも、いまだ賃上げの流れは続いており、単月ごとの伸び縮みにあまり神経質になり過ぎる必要もなかろう。
いずれにしても、今回の結果で9月米利上げの可能性が完全に封印されたということはなかろう。市場関係者のなかには「(利上げ支持に)辛うじて足りる内容だった」とする向きもあれば、「(米利上げは)9月になるだろう100%確実だとは言わないが、100%に近い」とする向きもある。
本日(5日)が休場となるNY勢がドル売りポジションを一旦解消しておいたという側面もあろうが、ストップロスも巻き込みながらドル/円が一時104.30円まで上値を伸ばしたという事実は軽視できない。また、結果的に今年1月29日高値と5月30日高値を結ぶレジスタンスラインを上抜け、一目均衡表の日足「雲」下限あたりまでの戻りとなっている点も要注目と言えるだろう。
考えてみれば、8月の月足ロウソクも下ヒゲを伴いながら終値で62カ月線を下抜けることはなかった。これで6月、7月、8月の3カ月連続で62カ月線が下値をサポートしたことになり、これまで以上に62カ月線の下値支持力は強まったと考えられる。
本日以降は、やはり前記のレジスタンスラインを“明確に”上抜けるかどうかに注目すると同時に、日足「雲」上限や89日線の抵抗をブレイクできるかどうかという点も見定めたい。仮に、これら複数の節目を順に上抜ける動きとなったならば、後々のドル/円の上方視界は一気に開けてくる可能性があると言えそうである。
今週は、まず7日に公表されるベージュブックの内容が気になるところだ。先にフィッシャーFRB副議長が「あくまで今後のデータ次第」と念を押したが、これまで想定されていたほど利上げのハードルは高くないと見る向きもある。米金融当局者らは「状況さえ許せば(可能であれば)踏み切りたい」という認識であるように思われる。少なくとも市場にそのような見方が拡がれば、ベージュブックの内容に対しても比較的ポジティブな感触を覚えるのではないだろうか。
また、8日にはECB理事会とドラギ総裁の会見が予定されている。何の前触れもなく具体的な政策変更の判断を下す可能性は低いと思われるが、今後の政策方針について何らかの示唆があるかもしれない。夏季休暇明けとなり、あらためて欧州金融システムの問題が蒸し返されてくる可能性も高いと見られる。とくにイタリアの銀行問題は喫緊の課題と言え、このまま波風なく収まるとは考えにくい。ユーロ/ドルが日足「雲」を下抜けて一段と下げ余地を拡げれば、そのぶんドルが強含みとなる可能性もあるだろう。
(09/05 08:40)
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プロフィール
田嶋 智太郎(たじまともたろう)
昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。
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