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第564回 ドルは一時的にも調整入り!?

2017年01月16日

 少し振り返れば、昨年末からこれまでに発表された米経済指標の多くは、おしなべて強い結果を示している。昨年12月の米(コンファレンス・ボード)消費者信頼感指数は15年ぶりの高水準にまで上昇し、12月のISM製造業景況指数も事前の市場予想を大きく上回る2年ぶりの高水準、また12月の米雇用統計では平均時給が前年同月比+2.9%という高い伸びを示し、先週末13日に発表された12月の米小売売上高や卸売物価指数もともに強めの数値となった。
 先週10日に発表された11月の米求人労働異動調査(JOLTS)では、自発的離職者数が昨年8月以降4カ月連続して300万件超えとなったことが判明し、なおも多くの米労働者が“より(給与や待遇が)良い仕事”を求める強気の流れは続いている。当然、米金利の先高期待も強く、各地区連銀総裁からは「年内3回の利上げが適当」との声が多く聞かれていることも既知の事実である。
 ところが、年初こそ高めにスタートしたドルは日を追うごとに少しずつ水準を切り下げており、足下ではやや調整ムードを色濃くしている。実際、年初(3日)に一時118.61円まで上値を伸ばしたドル/円は、先週12日に一時114円を割り込む場面があり、年初に1.0400ドル割れの水準にあったユーロ/ドルは、先週12日に一時1.0700ドルに迫る場面を垣間見た。
 言うまでもなく、足下でドルの一時調整ムードを演出しているのはトランプ次期米政権による政策の不透明感の強さであると言え、今週20日の大統領就任式を通過するまでは一部の短期筋がドルの買い持ちポジションを手仕舞う動き、あるいは少なくとも新規のドル買いは手控えるといった動きが続くものと覚悟しておかざるを得ないだろう。

 周知のとおり、先週11日に行われたトランプ氏の記者会見後、ドル売りの流れは一段と強まった。それは、会見の内容がロシアのサイバーテロ攻撃や利益相反などの話題に偏ったことで、経済・財政政策に関する話題を期待していた市場が失望の反応を示した結果とされる。しかし、そこは誤解なく足下の事情を理解しておくことも必要であろう・
 今回のトランプ会見は、大手報道機関とトランプ氏との間に生じた確執によって大幅に延期されていたものがようやく実現したものであったため、その内容がロシアのサイバーテロ攻撃や利益相反などの話題に集中するのは当たり前のことであった。この会見時点において、経済・財政政策について言及することがトランプ氏にとって必ずしも優先事項ではなかったということも一応は理解しておかねばなるまい。
 もちろん、そこにある不確実性というものを市場が少々嫌気するのは致し方ないことでもある。大統領就任式後も2月初旬に予定される施政方針演説あたりまでは、ドルが調整含みの展開と続ける可能性が大いにあると見ておく必要もあろう。

 一方、足下のドル/円の価格推移(日足)において一目均衡表の「遅行線」が日々線を下抜ける格好となってきていることにも注目しておきたい。これは、昨年11月の米大統領選後に初めて目にする現象=一つの弱気シグナルであり、このあたりで折からの“トランプ相場”が一旦小休止となる可能性を暗示するものと見ておく必要もありそうだ。
 ドルの下値は自ずと限られると見られるが、少なくともドル/円については年初から形成されている下降チャネルの上辺を上抜けてこない限り、なおも上値の重い展開が続くと思われる。一方、ユーロ/ドルは一目均衡表の日足「雲」下限が上値抵抗になりやすいと思われることもあり、当面の戻りは自ずと限られると見る。今しばらくはドル/円の押し目買い、ユーロ/ドルの戻り売りのタイミングをうかがいたい。
(01/16 08:50)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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