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第612回 もはや足下のドル安に歯止めはかからないのか?

2018年01月29日

 先週26日、黒田日銀総裁は「日本は2%のインフレ目標にようやく近い状況にある」などと述べ、その前々日(24日)にはムニューシン米財務長官が「ドル安は貿易・(ビジネス)機会の面で良いこと」などと述べた。また、25日にはドラギECB総裁がユーロ高をけん制したい素振りを見せながらも元々市場に漂っていたユーロ強気のムードに抗しきれず、複数あった発言のうち「欧州の経済成長は予想以上に加速しており、いずれ基調インフレも上昇していくだろう」などといった会見内容の一部だけがユーロ買い材料として都合のいいのように取り扱われることとなった。
 どれもこれも、その内容が必ずしも間違っているというわけではないのだが、結果的には不用意な発言ということになってしまったと言える。その後。其々に当局が“火消し”に飛び回る運びとなった(26日、日銀は「黒田総裁はインフレ見通しを修正していない」とアピールした)が、その時点ではもはや後の祭りである。

 もともと、彼らは“市場”との対話に常に重きを置いていたのではないのか。やや神経質過ぎるほどに市場の声に耳を傾けていたのではないのか。結局は、単に「空気の読めないおじさんたち」になり下がってしまった。それをドラギ氏にまで当て嵌めるのは少々気が引けるところもあるが、実際、対話に失敗したということでは同じ穴の狢である。
 結果、ドル安とユーロ高・円高が一段と進むこととなったわけだが、まさかそれを本来の目的とした“確信犯”だったということは断じてなかろう。目下の市場は、とにもかくにもドル売りとユーロ買い・円買いを仕掛けたくて、仕掛けたくて仕方がないといった状態にある。ドルにとっては「弱気相場に買い材料なし」なのだ。
 だからこそ、米財務長官や日銀総裁らは、もう少し言い方に工夫をすべきであった。実際、ドラギ総裁は今回のムニューシン発言を「IMF加盟国間の合意に反する」とまで後に言い放っている。その実、25日に米大統領は「強いドルを望む」と叫んでおり、“ムニューシン坊ちゃま”の気まぐれ発言は非常に罪の重いものであったといわざるを得ないだろう。その意味では、ドラギ総裁も“被害者”の一人と言える。

 もちろん、いまさら彼らを攻めたてたとしても、それは詮無いことである。むしろ重要なのは、各国・地域の経済におけるファンダメンタルズの“素顔”の部分なのであり、それは何らかの思惑に捕らわれた市場の現在の見立てとは少々異なる。
 相場のことであるから、ときに本質とは逆の方向に走ることもあり、それは十分に理解したうえで目の前の動きと向き合うことも大切なのだが、いずれ本質的なところに相場が寄せて行くようになる局面も訪れるものと心得ておくことも重要と言えよう。
 つまり、米大統領が述べているとおり「米国にとってドル高は(紛れもなく)国益」なのであり、米国が繁栄してはじめて欧州や日本も繁栄するのである。もちろん、米国経済のファンダメンタルズは良好そのものであり、目の前でドル安傾向が続く現状は、たとえ「青臭い」と言われようが、正味のところ理解に苦しむ。
 一方、足下で進むユーロ高はせっかく改善し始めた域内の景気にとってダメージとなりかねず、上向き始めたインフレ率をも再び低下させかねない。市場の一部では、すでに「ECBの政策方針に関わるガイダンスの変更を(これまで可能性が高いと見られていた時期である)3月から6月に先延ばしすべき」との意見も出ていると伝わる。
 また、市場は「日銀の政策方針が近い将来において変更される可能性」を盛んに取り沙汰したがるようだが、実際にそのような段階を迎えるのは遥か先のこととなるに違いない。先走り過ぎと言うより、目下の市場はあえて“確信犯的に間違えている”ようでもある。いつか実態とのかい離がよりハッキリと認識されるようになり、強く円が売り戻される局面も訪れるものと見ておく必要があろう。
(01月29日 09:10)


※当コラムは毎週月曜日の更新です(月曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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