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第619回 米・中・日の政府ネタにもそれぞれ“賞味期限”があろう

2018年03月26日

 米中貿易戦争勃発への懸念が米・日の株価を大きく押し下げる要因になると同時に、国内では森友政局への警戒がリスクオフのムードを一層色濃くさせている。そうでなくとも3月決算期末を間近に控えた特殊な時節柄にあって、少なくとも今週いっぱいはドル/円や日本株の上値も押さえられやすいものと見られる。
 「Gゼロ時代の米中衝突」という、これまで長らく半ばフィクションの領域のこととして取り沙汰されてきた事柄が現実になりかねない状況に、目下の市場は恐れおののいている。とはいえ、本当にこのまま“貿易戦争”状態に突入してしまうほど米・中の首脳は能無しなのであろうか。“最終的に誰も得する者が残らない戦い”であることぐらい、ベンシルバニア大学や精華大学を卒業した優秀なオツムでなら簡単にわかりそうなものだ。
 米大統領の“選挙(支持率アップ)目当て”は見え見えだが、一応は「ビジネスマンとしての鼻も利く」などと評されていることを考えれば、あまりにも粗暴な保護貿易主義を振りかざして、一段の株価急落や自国経済に及ぶ甚大なダメージ、結果として景気が腰折れしてしまうことなどを、手放しで見過ごすというのも常識的には考えにくい。
 先週23日、米国に対する対抗関税の準備をしていると発表した中国商務省の報道官は「米国ができるだけ早く中国の懸念を解決し、対話と協議を通じて双方の違いを乗り越え、大局的な米中の協力関係を損なわないように促す」との談話を公表している。つまり、当面は“対話と協議”の行方が一つの鍵となりそうである。よって、現時点でいたずらな悲観論を展開することだけは厳に慎んでおきたい。仮に一定の関税措置や対抗措置が講じられた場合、それは果たして米・中・日の経済にどの程度の悪影響を及ぼすというのか。現実的かつ論理的に精査したうえで相応の判断を下して行く必要があるだろう。

 言うまでもなく、足下の相場を司っているのは政府絡みの材料であって、こればかりは定量的な分析も合理的な先行き見通しも通用しない。確かに「米トランプ政権における主要幹部の辞任・解任ドミノ」などといったセンセーショナルな現象や「米中間における対立の構図」などという極めてインパクトの強い話題は、一時的にも投資判断の“口実”に利用されやすい。しかし、そうした“ネタ”にも自ずと賞味期限はあり、いずれは本来のファンダメンタルズ要因に目線が向けられるようになるというものであろう。むろん、肝心な米国経済のファンダメンタルズは今のところすこぶる好調である。
 先週20-21日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見に臨んだパウエルFRB議長は、利上げに対して「中立的な立場」との姿勢を示し、インフレ加速の兆候は見られないと指摘するなど、慎重姿勢を維持することに努めたようであった。結果、後にドルは売りに押されることとなったが、正味のところ、この日のパウエル氏の言動からは「いたずらに市場に材料を与えない」との意図が明らかに透けて見えた。よって、ごく単純に「想定よりもハト派的であった」などと評するのは適当ではないと思われる。
 実際、FOMC参加メンバーらによって示された米国経済と当面の金利見通しは、前回のFOMC時に示されたものよりもやや上方(強気)にスライドしていた。所謂「ドット・プロット(金利予測図)」にあっては、2018年の中央予想値こそ前回と変わらずであったものの、2019年2020年の中央予想値については其々前回よりも上方に修正されている。
 今回の追加利上げで米政策金利は1.50~1.75%にまで引き上げられた。つまり、年内の利上げがあと2回だとしても年内に2.00~2.25%まで引き上げられる可能性があるということになる。これは、現在の豪政策金利=1.50%やNZ政策金利=1.75%を超え、先進主要国のなかでも最も高い水準ということになる。その点をじっくり考えれば、少し長い目でドルの下値にも自ずと限りはあるということになろう。
(03月26日 09:20)


※当コラムは毎週月曜日の更新です(月曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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