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第632回 いよいよドル/円はトライアングルを上放れるか?

2018年07月02日

 先週28日から29日にかけて開かれていた欧州連合(EU)の首脳会合で、焦点となっていた難民・移民問題での合意にひとまず漕ぎつけたことは大いに歓迎される。今となっては“取り越し苦労”で済んでよかったわけだが、会合が閉幕する直前まで「合意への道は極めて険しい」と見る向きも少なくはなかったわけで、ヘタをすれば独メルケル政権の政治基盤が不安定化するとの懸念も強く漂っていた。
 もちろん、今回の会合の合意をもって難民受け入れを巡るEU域内の分断がキレイさっぱり解消に向かうはずなどなく、ことに難民受け入れ負担が偏って重いイタリアにあっては、今回の合意を受けて国民の憤懣がコンテ首相に強くぶつけられる可能性もある。そうした点は、今後も十分に注視し、大いに警戒しておかねばなるまい。
 とまれ、ひとまずの合意を受けてユーロを一旦買い戻そうとする動きが急になったことも事実で、29日のユーロ/ドルは長めの陽線を描いたうえ、終値で21日線を上抜ける展開となった。あくまで首脳会談を警戒し過ぎた分を取り戻す格好となっただけで、やはり6月14日のECB理事会後の急落の衝撃はそう簡単には拭えない。
 個人的には、今しばらく戻りを試す展開を見定めつつ、ユーロドルに関しては今後も戻り売りを基本とした姿勢で臨みたい。ひとまずは、6月26日高値=1.1720ドルあたりが目先的な戻りの目安になると見ておけばよいものと思われる。

 一方、ドル/円については先週を通じて基本的に強めの基調が維持され、想定していた以上に底堅い印象が残る展開となった。もちろん、当面のドルの上値を押さえる中心的な役割を果たしているのが米中通商摩擦問題であることは明らかで、とにもかくにも米国が対中輸入関税を発動するとしている7月6日までに「どのような落とし処を見出すか」が目下の最大の焦点。そう言えば、6月29日付の日本経済新聞『スクランブル』欄でも「多くの投資家はトランプ氏の発言は駆け引きと割り切っており、焦点はいつ引っ込めるかだ」という株式ストラテジストの発言を引用していた。
 もはや「7月6日」は今週末なのであるから、今週はなかなか興味深い時間帯ということになろう。場合によっては、これまで市場全体に漂っていたリスクオフのムードが一旦緩まる可能性もあり、結果としてドルが少々強めに買われる、同時に円が少々売り戻される可能性もないではないものと思われる。
 その場合、やはり注目されるのは一つに「ドル/円が2015年6月から形成していると考えられる『トライアングル』の上辺(2015年6月高値と昨年11月高値を結ぶレジスタンスライン)ブレイクに挑戦するか否か」という点であろう。
 もはや、その水準は111円台半ばぐらいのところにまで下がってきており、場合によっては今週から来週にかけて同水準を上抜ける動きが見られる可能性もあると思われる。結果として。ここでトライアングルをクリアに上放れるとなったならば、正直、そのインパクトはかなり大きい。もちろん、トランプ氏がトランプ氏であり続けることは今後も変わらず、今後も同氏があくまでも中間選挙で勝ち名乗りを上げるためだけに様々な挙動と妄言を発して行くであろうことも想像に難くはない。
 ただ、やはり「政府ネタの賞味期限は限られる」という事実も変わらないと思われる。そして「最終的には各国経済のファンダメンタルズを反映する」という事実も変わらない。その意味では、この7月も10日に米労働省から発表される5月の『米求人・労働異動調査』の結果を決して見逃してはならない。これまで、筆者は幾度も「市場の注目度が低すぎる」と指摘してきたが、ここにきてようやく注目する向きも増えてきたようだ。
 なお、先週末で6月も終わったことであるから、ここでドル/円の月足チャートをあらためて眺めることもお忘れなく。ついに6月の一目均衡表の月足・終値は31カ月線を上抜けた。これはトランプ大統領就任以来初のこととなる。
(07月02日 08:50)


※当コラムは毎週月曜日の更新です(月曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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