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第642回 ドル/円はテクニカルにも上値余地を拡げる展開

2018年10月01日

 ついに、ドル/円は9月の月足・終値で一目均衡表の月足「雲」上限を力強く上抜けることとなった。先週28日は週末で同時に月末でもあったわけだが、この日の終値はほぼ日中高値という水準でもあった。同日は、東京時間中に日経平均株価が27年ぶりの高値圏まで上昇することとなったうえ、米株価も底堅く推移したことで、なおも市場のリスク選好ムードは強い。正味、少々驚くほどの強さと言っていいだろう。
 他方、イタリアの財政赤字への懸念が強まっていることに加え、あらためて英国による「合意なき(EU)離脱」への警戒が強まっていることなどから、ユーロが弱含みで推移していることもドルの価値を底上げすることにつながっている。

 とまれ、ドル/円がとうとう月足「雲」上限を上抜けたことで一気に上値余地が拡がりやすくなったことは確かである。実際、先週28日は年初来高値を更新する動きとなっており、次は昨年11月高値=114.73円から115円前後の水準が意識されやすくなる可能性が高い。加えて、月足の遅行線が26カ月前の月足ロウソクが位置するところをしっかりと上抜けてきていることにも引き続き注目しておきたい。
 もちろん、足下で日経平均株価の「騰落レシオ」が131.64%(28日)という過熱水準まで高まっていることを考えれば、目先的にも日本の株価が一旦調整含みとなる可能性は否定できず、その時点でドル/円も一旦上げ一服となる可能性があろう。
 とはいえ、なおも日本株が相対的に極めて割安な水準にあることに変わりはなく、目先一時的な日柄調整を交えることはあっても、調整が一巡した後は再び一段の上値を追う展開となることが期待される。米10年債利回りが一段の上昇を見れば、いずれ米株価が調整局面入りすることとなる可能性は否めないが、それによって「日本株への資金シフトがむしろ進む」と見る向きもあるという点は押さえておきたい。
 思えば、もともと「米中間選挙の年は年末株高」というアノマリーは以前から市場で取り沙汰されていたし、日米間の貿易協議ではとりあえず自動車関税の発動が回避され、市場では当面の安心感が醸成されている。
 先週行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)においては「事実上、2020年に利上げが打ち止めとなることが示唆された」との声も聞かれたが、そこまで先回りして相場が織り込むなどと考えるのは、さすがにナンセンスと言えよう。当座は、まず12月利上げの可能性を織り込んで行く局面であり、そのなかで115~118円あたりのレベルにトライして行く可能性は十分にあると見る。

 一方で、ユーロ/ドルが再び週足「雲」下限や月足「雲」下限を試す展開となってきたのは、やはりイタリアや英国の先行き警戒によるところが大きい。
 英国による欧州連合(EU)離脱=ブレグジットについては、2019年3月という“期限”が着々と迫るなかで、どうしても「合意なき離脱」に対する警戒感が拭えない。もともと一筋縄では行かないことが明白な案件であり、英国では賛成派・反対派ともに自身に都合のいい主張を続けているし、EU側としても決して妥協はできない。メイ英首相は調整的な解決法を模索するが、そもそも本件について民主主義的な解決の道を探ろうとすること自体に相当な無理がある。そうしたことがポンドの重しとなり、ともするとポンド/ドルが2017年1月安値=1.1987ドルを下回ってしまう可能性も否定はできなくなっている。
 また、先週27日にイタリア政府が経済財政計画を閣議決定したことが、それ自体、市場の不信と不安を増幅させている。もともとポピュリズム色の強い連立政権が健全な財政運営を進めることは極めて困難であり、その実、今回の閣議決定でバラマキ型の政策を見直していないことがあらためて明らかになってしまった。よって、当面はユーロ/ドルも1.1500-1.1550ドルあたりを試す可能性が高いと見られる。
(10月01日 09:10)


※当コラムは毎週月曜日の更新です(月曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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