今月9日から10日にかけて、ドル/円は89日移動平均線(89日線)、21日移動平均線(21日線)を順に上抜け、先週は幾度か200日移動平均線(200日線)を試すような動きとなった。現在200日線は109円の水準に位置しており、このあたりで一旦上値を押さえられるのは致し方のないところと言えよう。
とはいえ、もともと10月初旬には21日線が89日線を下から上に突き抜けるゴールデン・クロスが示現しており、いずれ21日線が上向きになってくれば、強気のサインとしての確度が一層増すこととなる。さらに、足下では8月1日高値と10月1日高値を結ぶ直線をネックラインとする「逆三尊(ヘッド・アンド・ショルダーズ・ボトム)」を完成させる動きも見られ、基本的には強気の流れが続いていると見ていいだろう。
仮に今後、200日線をクリアに上抜ける動きとなれば、次はまず8月1日高値=109.30円処が上値の目安。同水準は4月高値から8月安値までの下げに対する61.8%戻しのレベルでもあり、かなり重要な当面の節目と再認識しておきたい。
そもそも、8月1日高値というのはトランプ米大統領が対中制裁関税「第4弾」を発動するとツイートする以前につけたものであり、その水準まで値を戻して8月1日以降の下げを取り戻すということは、目下の日中貿易協議の進展状況とも符合する。
周知のとおり、米中貿易協議は今月10日から行われた閣僚級協議において「休戦」の方向にあることが示され、第1段階とされる合意事項については11月16日、17日に行われるAPEC首脳会議の際に、トランプ米大統領と習近平・中国国家主席が署名することを目指すとされている。
来年に米大統領選を控えるトランプ氏にとって、対中関税の税率をただひたすらに引き上げ続けるというのは必ずしも得策ではない。何より、結果として米景気や米株価にまでその悪影響が及んでしまっては元も子もない。実際、これまでの米中対立の悪影響は足下で発表される最近の米経済指標・景気データに少しずつ現れてきており、その結果を受けて市場は9月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)における追加利下げ実施の見方を強めている。
その米追加利下げ見通しに触発されて上値を追い続けてきた米・日株価については、目先的なスピード調整&値幅調整の必要性が高まってきている点に少々注意が必要と言える。ことに、日経平均株価に関しては10月に入ってからの上げピッチが速すぎて、10日以降には所謂「三空踏み上げ」のパターンには「売りで向かえ」がセオリーであり、実際に先週16日以降は上値の重い展開となっている。
もちろん、英国の欧州連合(EU)離脱の行方がいまだ不透明であることがドル/円、クロス円の上値の重しとなっていることも見逃せない事実である。既知のとおり、英国のジョンソン首相は先週19日、欧州連合(EU)とまとめた新たな離脱法の採決を先送りせざるを得なくなったことから、EUに対して10月末からの離脱延期を申請する書簡を送ったが、署名はしていない。
同首相は10月末の離脱を諦めておらず、この週明けから10月末離脱のために必要な立法手続きを進める構え。明日(22日)にも関連法の採決に漕ぎつけ、いやがおうにも英議会での新離脱案可決、10月末離脱実現というのが英首相の目指すところだが、そうは問屋が卸さないということになる可能性も大いにある。
市場は、先週末までポンドを勢い良く買い上げていたが、いまだ「合意なき離脱」になだれ込むリスクがあることを考えれば、目先はそろそろ買いの手も鈍る。とはいえ、英首脳の目論見が当たる可能性もないではなく、いたずらに売り叩くこともできない。今はとにかく、その行方を見定めて行くことが肝要である。
(10月21日 09:35)