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第700回 「ドル安」の結果としての「円高」には限界?

2020年03月02日

 先週1週間で、目の前の景色は一変してしまった。週明け24日に大幅下落となった米国株は翌25日以降も大きく下げ続け、NYダウ平均は週間でマイナス3583ドルと過去最大の下落幅を記録。ふと振り返れば、ほんの少し前(2月12日)まで史上最高値を更新する展開が続いていただけに、先週目の当たりにした暴力的な下げについては「ただ呆気にとられるのみ」という感じであった。
もちろん、新型肺炎ウイルス感染拡大の影響に対して、先々週末までの市場の見方がやけに楽観に傾き過ぎていたことも事実ではある。また、米国やドイツなどの株価が、かなり割高な水準に達しているとの感が強まっていたことも事実であり、ある意味では「当然の調整が入った」と言える部分もある。それにしても……先週の米国株の下げは「生涯でそう幾度も目の当たりにすることはない」というほどのものと言えるだろう。

 一つのきっかけはイタリアで感染者が急増しているとの報であり、ついに欧州にまで感染被害が飛び火したということを通じて、俄かにパンデミック(世界的な大流行)に発展する可能性というものが現実味を帯びるようになった。さらに、米疾病対策センター(CDC)が米国民に対して国内での新型肺炎ウイルスの流行に備えるよう注意喚起したことも、投資家らがリスク回避行動に走ることに十分モチベートした。
いきおい、米国をはじめ世界の株式市場から逃げ出したマネーは一斉に米国債市場に向かうこととなり、見る見る買い上げられた10年債の利回りは連日のごとく過去最低を更新することとなった。
なお、世界の株式市場から逃避してきたマネーは一旦、金(ゴールド)価格をも大きく上昇させることに貢献したわけであるが、驚いたことに週末(28日)のNY金先物価格は過去に例を見ないほど大幅に下落することとなった。これは、世界同時株安によって空けられた大きな穴(損失)を埋めるための換金(利益確定)売りが一気に進んだためであると見られる。それだけ、世界の投資家らの投資ポジションは僅か数日のうちに大きく損なわれてしまったということであり、今後、足下の世界同時株安に伴う逆資産効果は実に様々な形で現れると心得ておかねばなるまい。

足下の米10年債利回りは、あろうことか1.15%レベルにまで低下する事態となってしまった。先週29日には、一時1.1143%まで低下する場面もあり、まさにパニック状態である。結果、市場では俄かにドル売り圧力が強まることとなり、たまらずドル/円もかなり大幅な下げを余儀なくされることとなった。同時にユーロ/ドルが大きく値を上げていることからして、これは「円高」というよりも間違いなく「ドル安」である。
 少し振り返ると、ドル/円は2月19日-21日にかけて一気に112円台まで上昇する場面があり、市場の一部では「日本売りの結果」との声も聞かれていた。新型肺炎ウイルスの感染者数が中国に次いで多い日本の通貨「円」について、これからも「安全通貨」と見做し続けることは難しくなってきていると言われれば、それも道理ということになるのかも知れない。ここは冷静に判断して行きたい。
もともと、昨年秋の消費税率再引き上げや台風、大雨被害などの影響で日本経済の先行きには暗雲が漂っていたわけであるが、そこにウイルス感染の悪影響まで上乗せされるとなれば、もはや「リスク回避の円買い」などというワードは死語になってもおかしくはない。その意味からすると、当面のドル/円の下値というのも自ずと限られたものに留まるということになるのではないか。
 先週のドル/円の週足ロウソクは、一時的にも一目均衡表の週足「雲」下限(現在は107.65円)を試す動きを見せたが、結局は同水準が下値を支えるような格好にもなった。今しばらくは、なおも不安定な値動きを続ける可能性が高いものの、基本的には108.00円を軸に107.5—108.50円のレンジ内で推移すると見ておきたい。
 (03月02日 09:05)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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