米国の追加経済対策を巡る米議会与野党の協議が、ようやく大筋合意に達した。同時に2021会計年度(2020年10月―2021年9月)予算も採決される見通しで、市場にはひとまず安堵感が拡がりやすくなるものと思われる。
約9000億ドル規模に上る経済対策のなかには、個人への600ドルの直接給付や失業保険給付の週300ドル上乗せ、中小企業支援などが盛り込まれており、当然、その効果は米個人消費を活発化させたり、米国のインフレ率や債券利回りを上昇させたりすることに貢献するものと思われる。
ただ、その中身については大方「草案」の段階から明らかにされており、すでに市場では「織り込み済み」となっている可能性もないではない。しかるに、目先は「材料出尽くし」で米株価が調整含みの展開となる可能性もあると見られる。
そうでなくとも、11月初旬以降のNYダウ平均の値動きには上昇斜行三角形(ダイアゴナル・トライアングル)のパターンが見て取れるようになっており、これまでの強気相場が「一旦お休み」となる可能性があるという点も頭の片隅には置いておく必要があると思われる。
ちなみに、先週18日のNYダウ平均は一時30343ドルまで上値を伸ばして取引時間中の史上最高値を更新した。週明け以降に「終値ベース」でも史上最高値を更新する可能性は高いと見られるが、そこが目先の天井となる可能性は大いにあると見る。
仮に、米株価が全般に調整含みとなった場合には、やはりドル安の流れも一服しやすくなるであろう、そうでなくとも、市場にはドルのショートポジションがうず高く積み上がっており、そろそろ一旦は巻き戻しが入っておかしくない。
ドル/円にあっては、先週行われたFOMC後のパウエルFRB議長発言を受けて一時的にも102.88円まで下押す場面があったものの、その後は一旦買い戻されて一時は103円台半ばあたりの水準まで値を戻すこととなった。
11月初旬以降、ユーロ/円や豪ドル/円などクロス円は全般に強気の展開を続けている。そのことから考えても、足下のドル/円の下げは明らかに「円高」ではなくて「ドル安」が主導してきたものである。よって、ドル安に一旦歯止めが掛かりさえすれば、ドル/円には一定の戻り余地が生じると見られる。
むろん、このところのユーロ/ドルの上昇が少々過熱気味になっているという点も見逃せない。シカゴIMM通貨先物の投機筋のポジションは12月8日時点においてネットで15万6429枚の買い越しとなっており、9月初旬の直近ピーク時には及ばないものの、徐々に売り戻しのタイミングが近づいてきているようにも思われる。
そもそも、このところのユーロ/ドルの上昇についても、基本的にドル安の流れが主導していることは間違いない。先週は、FOMCを境にしてあらためてドル安が進む展開となった。どうやら、FOMC後に行われたパウエル議長の会見内容が「想定以上にハト派寄りだった」というのが市場の受け止めのようであるが、より正しくは「さしあたってユーロ/ドルの上値追いを躊躇わせるほどタカ派的ではなかった」ということになるのだろう。
正味のところ、主体的なユーロ高を正当化するような材料は見当たらない。むしろ、ユー圏経済の先行きは正直言って暗い。執筆時点においては、なおも英国と欧州連合(EU)の通商交渉が合意に漕ぎつけておらず、年内に双方の議会で批准できるかは不透明となっている。また、英国やイタリアなど幾つかの国で新型コロナウイルスの変異種が見つかっていることも気掛かりである。
これまでは、とにかく「値動きのいいものにつく」あるいは「比較的動かしやすいものを動かす」といった格好でユーロ/ドルが押し上げられてきた。しかし、この年末年始は少々下値リスクが強まる可能性があると見る。
(12月21日 08:45)