先週14日、バイデン米次期大統領が1.9兆ドル規模の新たな新型コロナウイルス対策案を発表。既知のとおり、その内容は十分な評価に値するものとなったが、市場にとっては既に織り込み済みで特段のサプライズもなかった。
むろん、対策実現の可否は米上下両院の審議次第でもあり、仮に予算関連法案に認められた特例措置を使うにしても、上院での可決には相当な時間を要するとされる。審議の過程で対策規模がある程度縮小する可能性もないではなく、差し当たり先週15日の米株市場は「対策案発表の『事実』で一旦売り」の反応となった。
とはいえ、一時的に378ドル安まで下落した15日のNYダウ平均の終値は前日終値比で177ドルの下げに留まり、全体としては景気の先行き期待が根強いとの感触もあらためて得られている。ただ、15日に発表された12月の米小売売上高が予想外の減少となったことはやはり少々気掛かりでもあり、当面は市場のムードが短期で変化しやすい点に要警戒ということになりそうである。
先週は、基本的にドル買いが優勢となり、ことにユーロ/ドルに関しては週末にかけての下げが顕著となった。昨年末から年明けにかけて見られたドル安の流れが逆転し、積み上がっていたドル・ショートの解消がなおも進んでいることが一つ。むろん、これは米民主党による「トリプルブルー」の実現で米10年債利回りが強含みとなったことも大きい。
加えて、足下で欧州経済の先行き不安が日増しに高まっている点も見逃すことはできない。既知のとおり、欧州では「(コロナ」変異種」の感染拡大が顕著となっており、フランスやスペインをはじめとする欧州各国で移動制限・行動規制が一段と強化されている。
加えて、イタリアの連立与党に内紛が生じており、結果、新型コロナからの復興に向けた取り組みが停滞するとの恐れもある。また、オランダでは税務当局が国民に育児手当を不当に返還させていたことが発覚し、ルッテ内閣が15日に総辞職するに至った。こうした域内の政情不安定化もユーロ売りを誘っている。
このように諸々の要因が折り重なって、ユーロ/ドルは今月8日に11月初旬から形成していた上昇チャネルを下放れた。ほどなく、21日移動平均線をも明確に下抜けており、15日には1.2100ドル処をも下回った。目先は昨年12月9日安値の1.2059ドルが意識されやすいと見られるが、同水準をも下抜けると次に1.2000ドル処を試す可能性が高いと見られる。
一方で、先週のドル/円は104.00円を軸とする103.60-104-40円のレンジ内での値動きに終始。今月7日に上抜けた21日移動平均線が当面の下値サポート役として機能し続けており、今週も104.00円処を上抜けてくると一旦は104.30-40円処を試す動きになると見られる。
今週は、20日に米大統領就任式が執り行われ、翌21日には日銀金融政策決定会合と欧州中央銀行(ECB)理事会の結果が其々明らかにされるなど、相場に相応のインパクトとなり得るビッグ・イベントが相次ぐ。欧州の現状を鑑みるに、ECB理事会後のラガルド総裁会見の内容は特に気になるところとなろう。
また、米主要企業の決算発表が本格化することもあり、足下の米・日株価の動向に大いに気になる。ともに目先の高値警戒感が強まっており、一旦は少々まとまった調整を交えるリスクに警戒しておく必要があると言えよう。
加えて、これまで感染の抑え込みに成功していた中国でコロナの新規感染者が10か月ぶりの高水準に達していることも気掛かりではある。既に2800万人以上がロックダウン(都市封鎖)下に置かれており、当面の需要の下振れ懸念は拭いがたい。これまで世界経済全体のけん引役となってきているだけに、全体のムード悪化につながりやしないか注視しておきたい。
(01月18日 08:30)