FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

外貨投資 転ばぬ先の智慧

最新の記事

第756回 目先的なドルの押し目を拾う好機!?

2021年05月10日

 先週7日に発表された4月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが前月比+26.6万人と市場の事前予想を大幅に下回った。既知のとおり、予想は100万人超でFOMCメンバーのなかにも強気の見通しを唱える向きが少なくなかった。
そのため、発表直後は一時的に市場で混乱も生じたが、時間の経過とともに本来の落ち着きを大方取り戻す流れとなった。実際、米10年債利回りは一時1.46%台まで低下したものの、後に1.57%台まで水準を戻している。

 今回の結果が「事前にまったく予想されていなかった」というわけでは必ずしもない。市場関係者のなかからは、以前から「米政権によって追加の失業保険手当が給付されているうちは、それが本格的な雇用の増加を阻害する可能性がある」との指摘も聞かれてはいた。実際、バイデン米政権は3月に成立した総額1.9兆ドル規模の追加経済対策のなかで失業保険の週300ドル上乗せ措置を9月まで延長することを決めている。
 結果、米国では政府による上乗せを含めた失業保険手当の合計額が毎月3500ドル程度にもなる州が少なくないとされ、今しばらくは「あえて働く必要がない」と考える向きも少なくないと見られる。米政府による上乗せ措置は9月が期限であるから、その1~2ヵ月ぐらい前から求職活動を再開する向きが増えると想定するならば、本格的に雇用者数が増加するのは7月ぐらいからと見ることもできよう。
 少なくとも、米企業による「求人」の数が足元で見る見る増加していることは間違いない。それは、データが2カ月ほど遅れて出てくるため昨年のパンデミック発生以降は注目度が低下している「米求人労働異動調査(JOLTS)」の推移を見ても明らかである。なかでも、とくに飲食店やケアサービスなどの低賃金業種で人材の手当てが困難になっていることは想像に難くない。
 また、昨年春のコロナ・ショックが「季節調整済み」のデータに影響を及ぼしているという事実も見逃せない。その実、調整前の4月の雇用者数は108.9万人もの増加となっていた。むろん、コロナ下で学校が閉まったため今は育児に勤しんでいるというケースもあれば、米株高のお蔭で労働市場から身を引いても生活に困らなくなったという向きもあろう。さらに、折からの世界的な半導体不足で一部の製造業が工場の稼働を一時休止している影響もある。
 いずれにしても、今回の米雇用統計の結果が米景気の回復期待に水を差すものでないことは確かである。むしろ、結果が少々“控えめ”なものになったことで、市場に拡がりつつあったFRBによる早期出口戦略着手の思惑もやや後退し、米株価は堅調な推移を続けている。今回の結果は、またも米株価にとって「都合のいい」ものとなったわけである。
 
 その一方で、先週7日のドル/円が一時108.40円処まで下落し、結果的に21日移動平均線や一目均衡表の日足「雲」上限を下抜ける格好となったこともまた事実である。同時に、ユーロ/ドルは4月29日に付けた直近高値=1.2150ドル処を上抜け、一時は1.2171ドルまで上値を伸ばした。
 それでも、基本的に円安の流れに変わりはないと見ていいだろう。前述したとおり、7日の米10年債利回りは下げ一巡から一気に切り返して最終的には前日比で若干のプラスとなった。それと同時に、米10年債のブレークイーブン・レート(期待インフレ率)は2.5%台まで大きく上昇している。なおも市場のインフレ期待が高まり続けていることを考えれば、少なくともドル/円の下値は限られたものになると思われる。
 米雇用統計発表後のドル/円の急落は、目先のストップロスが大掛かりに巻き込まれた結果であるところが大きいと考えられ、市場が冷静さを取り戻せば再び買い戻しの流れが強まると見る。個人的には、ドル/円の押し目買いとユーロ/ドルの戻り売りでエントリーのチャンスを狙いたいと考える。

(05月10日 07:00)

このページの先頭へ

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意


【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。

【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。

【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会

このページの先頭へ

FX(外為取引)・証券のマネパHOME > マーケット情報 > FXコラム > 外貨投資 転ばぬ先の智慧 > 第756回 目先的なドルの押し目を拾う好機!?