先週末11日の米株市場では、主要3指数が小動きながらも続伸し、S&P500指数は2日連続で史上最高値を更新した。ことにIT・ハイテク株の底堅さが目立つ格好となっており、その背景には米10年債利回りが1.5%割れの水準で低調に推移していることがある。
実際、先週10日には5月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、「総合」で前年比5.0%上昇と市場の事前予想を上回る強い内容であったのにも拘わらず、米10年債利回りは一時1.43%台まで低下した。一体、どうして米国債利回りは下げの反応となったのだろうか。
アナリストらのレポートには「それでもFRBの慎重スタンスは変わらないと捉えられたため」、「(米CPIの強い結果は)中古車や航空運賃などコロナ禍で低迷した旅行関連の急速な伸びが影響した結果であるうえ、いわゆるベース効果による歪みが生じた結果でもあると見られるため」などの見解が少なからず披露されており、それも「まったく的外れ」というわけではなかろう。しかし、そこにはもう一つ重要な「ワケ」があるということもあらためて確認しておかねばなるまい。
そのワケとは「積み上がった米国債の売りポジションを解消する動きが断続的に見られている」というものであり、売り方による買い戻しが更なる買い戻しを呼ぶ「踏み上げ」的な状況になっているという点はやはり見逃せない。
少し振り返れば、一頃は米10年債利回りが1.7%台に乗せるなどして市場全体に強いインフレ警戒感が拡がるといった局面があった。なかには「2%近くまで上昇するのは時間の問題」などとする向きも当時はあり、当然、そこには米国債の売りポジションを積み上げる投資家の姿もあった。つまり、足元で生じている米国債利回りのやや異様な低下というのは言わば「ワケあり」で「一時的」なものである可能性が高い。
また、もう一つ重要なトピックとして伝わっているのは「米国の25州で共和党の知事が失業保険給付の特別加算(上乗せ給付)を当初予定されていた期限の9月上旬を待たずに打ち切ると宣言した」というものである。25州は全人口の4割強にあたり、6月12日から7月10日にかけて前倒しで特別加算を止めるという。
全米で経済再開が着実に進んでいるのにも拘わらず「手厚い給付があるために働きに出ることを控える向きが多いことによって、各地で深刻な人手不足が生じている」という実情を考えれば致し方ない対応とも思えるが、そうなれば今後、慌てて求職活動を開始する向きが急増するということも容易に想像がつく。
結果、確実に「平均時給」は低下するため足元のインフレ率は少々低下するかも知れないが、雇用者数が急増することも間違いなく、そう遠くない将来において米国債利回りは再び強含みになってくると見ておかねばなるまい。やはり、足元の利回り低下は「一時的」である可能性が高いのである。
そうであるならば、目先的な米国債利回りの低下に敏感に反応して一時的にドルが売られるような局面では、そこですかさずドルを拾いに行くというのも一手ということになろう。前回更新分でも述べたとおり、ドル/円については一目均衡表の日足の「基準線」と21日移動平均線(21日線)が下値サポートとして機能しており、水準的には109.20-30円処が非常に底堅い。上値は109.80円処の節目がレジスタンスとして意識されやすくなっているが、同水準をクリアに上抜ければ少なくとも6月4日高根=110.33円あたりまでは目線が上がることとなろう。
一方、ユーロ/ドルは先週11日に節目と見られる1.2150-60ドル処を下抜けたことで、そのまま1.2100ドル処までスルスルと下げた。売り圧力が一段と強まった場合は目先的に1.2060ドルの節目が試されやすいと見られ、逆に反発した場合はあらためて1.2150-60ドル処が目先の上値の目安になると見る。
(06月14日 07:00)