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第780回 市場早期利上げ観測は些か先走り気味だった…

2021年11月08日

 前回更新分の本欄で、筆者は「市場における『疑い』は間違っている可能性がある」と述べた。そして実際に、先週の市場は「主要中銀の利上げに対する(疑いの)見方を修正している」と思われるような反応を見せた。
 無理もないのは、先々週の欧州中央銀行(ECB)理事会も先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)、英中銀金融政策委員会(MPC)も、どれも揃って市場が織り込んでいた利上げ期待をけん制するような姿勢を政策決定や会見の内容に強く滲ませたからである。

 先週のFOMCでは、11月中旬からテーパリングを開始し、月額150億ドルの減額を続けることで、順調に行けば来年6月に完了することが示された。これは、ほぼ市場の想定通り。普通に考えて、毎月1200億ドルもの資産購入を今後も継続する理由を正当化するのは困難であり、むしろ開始時期は遅すぎたぐらいである。
 テーパリング完了の想定時期が来年6月でも9月でも、そのまま利上げのプロセスに直結するわけではないことも確かであろう。実際、FOMC後の会見でパウエル議長は「利上げの条件が来年に満たされる公算は小さい」、「利上げに対してFRBは忍耐強くいることができる」などといった見解を示している。
 それでも、市場には前回のFOMC声明文でインフレ加速について「一時的な要因を反映」と表現していた文言を今回「一時的と予想される要因を反映」に変更したことにヤケに執着する向きもある。市場の一部からは、テーパリングの完了が来年6月の見通しとなったことで「2022年は年3回の米利上げもあり得る」などという声さえ聞かれていた。
 再認識しておきたいのは、足元のインフレ加速の原因が「モノ」や「ヒト」の需給バランスが崩れていることにあるということである。「需要」が急激に復活している一方で「供給」にはいまだ強い制約がある。これは、言うまでもなくパンデミックが生じた結果であり、決して構造的なものでも普遍的なものでもない。よって、結果として生じている目の前のインフレについては「一時的」と見るのが妥当であろう。
 まして、供給制約の問題を解決に導くのはテーパリングでも利上げでもない。あえて言えば、必要なのは「時間」である。時間の経過とともに供給制約の問題は必ずや解決に向かい、結果的に「供給制約に起因するインフレ」は一旦落ち着く。むろん、後に全体景気の盛り上がりを反映した「健全な」インフレに対応するための金融政策の「正常化」は必要となろう。つまり、いずれ利上げは必要になるのだが、市場の利上げ観測だけが過度に先走るような状況とは冷静に向き合って行くことが肝心ということである。

 先週は英国のMPCでも市場が期待していた利上げは見送られ、市場には全体に“意気消沈”のムードが大きく広がった。今回のMPCの決定については、ベイリー英中銀総による事前の「ミスリードに結び付くような発言」が問題視されるところもある。とまれ、市場にとっては「ここで一旦頭を冷やす」ことも必要であろう。
 前回も述べたように、当面は「FRBやBOEに比べてECBの方が早期の緩和縮小(ならびに金融政策の正常化)に慎重である」という状況に変わりはない。よって、自ずとユーロ/ドルやユーロ/ポンドの上値には限りがあるということになろうMPCの結果を受けてユーロ/ポンドは一旦大きく値を戻したが、基本的には戻り売りの姿勢で臨みたい。
 また、ユーロ/ドルについても依然として一段の下値リスクへの警戒を怠れないと考えておく必要があろう。なおも、一目均衡表の週足「雲」下限を下抜けるかどうかが焦点であり、クリアに下抜けた場合には少し長い目で1.1400ドル処を試す動きになると見る。
 一方、ドル/円については113円台前半の水準で押し目買いを入れるスタンスで臨みたいと個人的には考える。先週末発表された10月の米雇用統計が強めの結果であったことは事実であるし、今後は米年末商戦絡みのニュースなどがドル買いを誘う可能性も高いと見る。

(11月08日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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