週末には、サマーズ元財務長官から「今すぐに臨時のFOMCを開催し、量的緩和(QE)プログラムを終了させるべき」との声も伝わってきており、それは至極ごもっともな指摘であると思われる。確かに、最初の利上げ幅を云々する前に、いまだ続けられている資産購入策を直ちに停止することの方が先であろう。ただ、サマーズ氏の指摘は今市場で取り沙汰されている「年内の利上げ回数」や「一回当たりの利上げ幅」、「バランスシート縮小(QT)」などの議論とは少々次元が異なることも事実ではある。
もちろん、いよいよ3月からFRBが金融政策の正常化を漸次進めることになるわけであるから、当面、基本的にドルの下値は堅いと見ておいてよかろう。ドル/円で言えば、日銀が先週10日に「指値オペ」と呼ばれる金利抑制策を14日に実施すると発表したことも非常に重要な材料として見逃せない。このことによって米・日当局間の政策方針の違いがより鮮明となり、本来的にはドル/円の上値が拡がりやすくなるはずである。
ただ、目先はウクライナ情勢が一段と緊迫の度合いを強めるとの懸念があり、どうしてもリスク回避の円買い圧力が強まりやすい状況でもある。
実際、米国のサリバン国家安全保障顧問は「ロシアは早ければ五輪期間中にもウクライナ国内で軍事行動を起こしたり、紛争を引き起こそうとしたりする可能性がある」と言って憚らない。一部報道では、バイデン大統領が「ロシアがウクライナへ侵攻すると確信している」と語ったとも伝わる。確かに、ロシアのプーチン大統領は目下のところ振り上げた拳の下ろし処を探しあぐねているようにも映る。
一方で、ウクライナ側は2014年のクリミア危機以来、軍の整備を着々と進めてきており、ロシアによる侵攻はそう容易いものではないと見られる。それでも、今以上にウクライナ情勢が緊迫化すれば、その舞台は欧州が中心となるわけで、結果、今しばらくはユーロの上値が押さえられやすい状況も続くこととなろう。
実際、先週11日のユーロ/ドルは大きく値を下げ、ポンド/ドルも上値の重さが強く感じられる動きとなった。もっとも、11日はラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁に対するドイツメディアのインタビュー内容も伝わっており、その言葉の端々からは市場の先走りをけん制したいとの思いが滲みだしているようにも感じられた。
とまれ、まずは先週末にかけてNYダウ平均が2日で1000ドル以上もの下げを演じたことを受けて、週明けの東京市場がどの程度マイナスの反応を示すかが重要。米・日をはじめ主要国で同時株安の状況となれば、当面は円の上値余地を探る状態が続く。
そこに米金融当局者の発言やウクライナ情勢の行方などといった要素が加わると、外国為替相場はいつになく複雑な展開にならざるを得ない。
基本的には、ドル/円、クロス円に押し目買いを入れるチャンスをうかがいたいところであり、ドル/円に関してはやはり一目均衡表の日足「雲」上限の水準(115.00円前後)が極めて重要なチャートポイントであると再認識しておきたい。
一方、ユーロ/ドルに関しては目先的に再び1.1300ドル処を試す可能性が高いと見る。
(02月14日 07:00)