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第804回 “ステーブルコイン騒動”一服でリスクオフ後退

2022年05月16日

 先週13日は、日経平均株価が前日比678円高、NYダウ平均が同466ドル高、ナスダック総合指数が同434ポイントと大幅に反発。それまでの下げが相当にきつかったことを考えれば、週末を前にポジション調整の動きが生じるのも道理ではある。なにしろ、NYダウ平均は5日以降、12日までの6営業日で2300ドル超も下落していた。
 ただ、よく見ると12日の日足ロウソクは長めの下ヒゲを伴う下影陽線の形状を成している。下ヒゲの部分は、ステーブルコイン「テザー」の価格が一時的にもドルとの連動から逸脱して1テザー=0.962ドルまで下落したことと、その後、テザー側が「問題なく1対1の比率でドルに交換可能」と言明した結果、ほぼドルペッグに戻ったことを映す。
 既知のとおり、テザーの一時下落は同じステーブルコインである「テラUSD」の価格が9日あたりから急落しはじめ、13日に一時10セントを下回るところまで暴落したことの余波を受けたものと考えていい。そもそも、テラUSDの価値を担保する仕組み自体に問題があり、今後は新たに適切な枠組みが設けられることとなるのだろう。
 ただ、今回はテラUSD価格の暴落を受けた市場が「すわ、流動性バブル崩壊か」などと無用な思惑を膨らませ、全体が一時的にもリスク回避姿勢を一気に強めたことが米・日株価や米10年債利回り、ドル/円、クロス円などの一時的な下げにつながったと見られる。

 結局のところ、テザーがペッグを回復したことで、とりあえず市場の極端なリスク回避ムードは後退するに至っている。結果、ドル/円は週末にかけて129円台を回復する動きとなり、目先は重要な節目の一つと目される129.50円処を再び上抜けるかどうかが焦点ということになりそうである。
 少し振り返ると、12日にドル/円が129.50円処をクリアに下抜け、そこから一気に127円台半ばまで一時的にも大きく値を下げる動きとなったのである。よって、同水準をクリアに上抜ける動きとなれば、再び130円台乗せをうかがう動きとなっておかしくない。
 先週は、4月の米消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)が発表され、その結果から「いまだインフレがピークに達したとの確信には至らない」との見方が強まり、ますます米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派姿勢を強めることが警戒されたとの解釈があちこちでなされていた。「だから、週末にパウエル議長が0.75%の利上げは積極的に検討していないと再表明したことにより、米株価は大きく値を戻した」ということなのだが、実際には前述したテザー絡みの“騒動”が一段落したことの方が大きかったわけである。
 ちなみに、13日に発表された4月の米輸入物価指数や米輸出物価指数は、前回実績と事前の市場予想をともに下回る結果となった。あらためて、4月の米CPIや米PPIの結果を振り返って見ても、やはり米国のインフレはすでにピークアウトしはじめていると見るのが妥当なのではないか。実際、元米財務長官のサマーズ氏もTVインタビューに臨んで「インフレは3月に年率8.5%となったことで天井を打った可能性もある」と述べていた。パウエル議長にしても、その可能性を念頭に置きながら、市場に拡がる「オーバーキル」への懸念を払しょくするようなかじ取りを行っていくと期待したい。

 さて、今週も4月の米小売売上高の発表やFRB議長の講演などといった重要日程が控える。米地区連銀総裁の講演も相次ぎ、その多くがタカ派色の強いものであれば、それだけドルの上値リスクも高まるだろう。
 ただ、今週は欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁による講演や前回開催分のECB議事録の公開なども控えており、それらを受けてユーロ/ドルが強含みとなる可能性もあるものと見ておきたい。既知のとおり、ここにきて多くのECB理事らが6月か7月の利上げに言及し始めており、今後はラガルド総裁の出方が市場の思惑を左右しやすい。
 そのうえで、一つの焦点はユーロ/ドルの2017年1月安値=1.0340ドル処でのサポートが機能し続けるかどうかということになろう。

(05月16日 08:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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