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第808回 ドル独り勝ちの様相 再び色濃く…

2022年06月13日

 市場の注目度が非常に高かった5月の米消費者物価指数(CPI)の結果は、大方の事前予想に反して幅広い項目で上昇が加速し、前年同月比の伸び率が40年ぶりの大きさを更新するに至った。つまり、市場の一部で強まっていた「インフレがピークに達して落ち着き始めている」との希望的観測を見事に打ち砕くこととなったのである。
 たまらず、同日のNYダウ平均は前日比880ドル安と急落。米連邦準備制度理事会(FRB)が6月と7月だけでなく9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも大幅利上げの実施を決定する可能性があるとの見方や、7月の利上げは0.75%ポイントになるとの見方まで台頭し始めており、米株価は一段の金融引き締めの影響や景気後退(リセッション)のリスクをもあらためて織り込まざるを得ない状況となった。

 米CPIの結果を受けたドル/円は一旦134.40円処まで一気に上昇したものの、ほどなく米株価指数先物の急落や米10年債利回りの瞬間的な急落などを受けて133.50円台まで急落するといった非常に荒っぽい動きを見せた。ただ、その後は徐々にドル買い優勢の流れとなり、結局は同日朝方に位置していた水準=134.48円処まで値を戻す「往って来い」の展開となった。
 同日の夕方には一時133.36円まで下押す場面もあり、ドル/円の下方リスクが全く警戒されていなかったわけではない。既知のとおり、この日は財務省と金融庁、日銀が国際金融資本市場に関する情報交換会合を開き、足元の為替相場について「急速な円安の進行が見られ、憂慮している」との声明文を出した。財務省によると、3者会合で声明文を公表するのは「初めてのこと」であるという。
 会合後には財務省の財務官から為替介入の可能性についての言及もなされていたわけであるが、ここまでが「精一杯の口先介入」という印象であったことも事実。今週は日銀金融政策決定会合後の黒田総裁会見が注目されるが、先週もそうであったように、総裁の発言はかえって市場に「円売りの口実」として利用されてしまうことが少なくないということも頭の片隅には置いておきたい。

 まして、今週はFOMCで0.5%ポイントの利上げが決定される見通しであることに加えて参加メンバーらの経済見通しと金利見通し(ドットプロット)も公開される。
 経済見通しにおいて景気後退懸念が示される可能性は高いが、それを踏まえてなお9月以降も大幅利上げが継続されるのかどうか、ドットプロット上に示されるメッセージからは目が離せない。ともすると、ドルは“独り勝ち”の展開になりやすく、結果としてドル/円が中期的に135円台の節目をクリアに上抜ける動きとなってもおかしくはない。
 先週は週末にかけてユーロ/円やポンド/円などクロス円全般が弱含みとなっており、そのことがドル円の上値を押さえる一因となる可能性はある。ただ、クロス円が弱含みになったのはドルストレートが一段と強気に傾いたからでもあるわけで、その意味では今週もユーロ/ドルやポンド/ドルの下値リスクに引き続き警戒しておきたい。
 ユーロ/ドルについては、先週行われた欧州中央銀行(ECB)理事会後のラガルド総裁会見の内容が市場で弱気材料と捉えられている。そのため、ECBの金融引き締めは「市場の織り込みよりも緩やかで短期的なものに留まるだろう」という方向に市場の見立ては変化してきている。
 結果、ユーロ/ドルは一時1.0506ドルまで値を下げ、再び一目均衡表の日足「雲」に上値を押さえられる格好となった。つまり、今回もユーロ/ドルに対しては戻り売りで臨むのが正解だったということになる。
 今週は英中銀が16日に金融政策委員会(MPC)を開き、0.25%ポイントの利上げを決定すると見られるが、結果的にポンド売りが一層強まりやしないかという点も注視しておきたい。

(06月13日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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