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第812回 市場の関心は6月の米CPIに集中

2022年07月11日

 安倍元首相の訃報に接し、まずは心よりご冥福をお祈り申し上げたい。

 市場の一部には「アベノミクスの象徴である日銀の大規模緩和に影響」との見方もあると聞くが、そのようなことは断じてなかろう。先週末8日の東京市場では大引けにかけて日経平均株価が値上がり幅を一段と縮めたが、それはETF分配金捻出に伴う現物売りと先物売りの影響がやはり大きかった。本来であれば、8日・9日・10日の3営業日で換金するはずのものが、たまたまカレンダーの関係で8日に集中してしまったわけである。
 この換金売りについては、誰もが事前に把握していた。その割に先週の日本株の値動きが基本的に強含みであったことは大いに注目すべきことと言える。それだけ、市場のリスク回避ムードが和らいでいたことの証と言えよう。
 象徴的なのは、NY金先物価格が6月下旬以降に急落し、先週6日には終値ベースでの年初来安値を更新したことである。それは、市場で一頃よりもインフレ懸念がだいぶ和らいできていることの証左。もちろん、同時に世界的な景気後退懸念が強まっていることを示すものでもあるわけだが、もともとインフレ抑制策を進めることとそうした懸念が生じることは“セット”なのであり、取り立てて騒ぎ立てる性質のものでもない。

 いずれにしても、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で75bpの追加利上げ実施が決定されることはとうに織り込み済みとなっている。問題は「その次」ということになるわけだが、幸い8月はFOMCの開催がないため、まだかなりの時間的余裕がある。
 既知の通り、先週末8日に発表された6月の米雇用統計の結果は、米労働市場が依然として引き締まった状態にあることを示していた。結果、先々の景気減速懸念が少々和らぐ格好となったが、それと同時に「オーバーキル」への警戒は多少なり強まった。やはり肝心は「9月の米利上げ幅がどの程度になるか」である。
 その意味からも、今週13日に発表される6月の米消費者物価指数(CPI)の伸びに対する市場の関心は極めて高い。前回更新分の本欄でも述べた通り、5月の結果は後に「CPIショック」をもたらすほどのインパクトとなったが、実のところ「コア指数」の伸びは4月分から鈍化していた。また、6月末に発表された5月の米個人消費支出(PCE)コアデフレータも事前予想を下回る結果であった。
 先週は、7日に米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーラー理事が今後の利上げ幅について「9月会合は50bp、それ以降は25bpに縮小できるか協議したい」などと述べて市場の注目を集めていたが、それは「かなりいいセン」であると感じられた。
 今後、インフレや利上げペースがピークアウトしていくとの見方が市場に拡がって行けば、徐々にドルの上値余地も限られたものになって行くだろう。ドル/円についても、目先は137円の節目が意識されやすいものの、6月のCPIの結果次第では一旦21日移動平均線を下抜けて、調整局面入りとなる可能性もあると見られる。

 ただ、当面はユーロやポンドが対ドルで一段と弱含みになっていくことに警戒を要することも事実である。先週5日、ついにユーロ/ドルは1.0350ドル処の節目を割り込み、8日には一時1.0072ドル処まで下押す場面を垣間見た。
 欧州のエネルギー供給問題は日増しに深刻なものとなっており、いずれはロシアが欧州向け天然ガス輸出を完全に停止する恐れもある。また、欧州中央銀行(ECB)が金融政策の正常化に着手するのはいいが、そこに生じかねないユーロ加盟国間のフラグメンテーション(分断・断片化)への懸念を払拭するのは容易ではない。すでに、ユーロ/ドルはパリティ(1.00ドル)を試す段階となっており、気の早い向きはさらに一段のユーロ安水準を想定し始めている。8日の日足ロウソクは長めの下ヒゲを伴う格好となったが、なおもパリティ割れの水準を試すことへの警戒は怠れまい。目先的な戻りの目安は1.0350ドル処と考え、そこは戻り売りで対応したい。

(07月11日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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