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第815回 趨勢的な円安の流れはいまだ継続

2022年08月08日

 先週1日、米10年債利回りが一時2.5%台まで低下する場面があった。それは、なおも底堅く推移する「米国経済の実状」に照らして相当な違和感を覚えるものであったし、結果としてドル/円が一時130円台前半の水準まで下押したことについても、同様にかなりの違和感があった。
 前回更新分の本欄で述べた通り、ドル/円は海外ファンド勢が意識しているとされる50日移動平均線(50日線)を7月29日に下抜けたところから下げを加速させ、8月1日には一目均衡表の日足「雲」下限や89日移動平均線(89日線)を試す動きを見せた。これは、それまでに積み上がっていた円売り・ドル買いポジションの解消に伴う、明らかな「投げ(見切り)売り」であったと言える。
 本来であれば、この日足「雲」下限や89日線が下値を支える格好となってもおかしくなかったのだが、この水準を2日には一時下回る動きも見られた。これは、「ペロシ米下院議長の台湾訪問」を口実とした短期筋による「売り仕掛け」が中心であったと見ていいものと思われる。そのため、2日のNY時間入り後に複数のFOMCメンバーらが口々にタカ派寄りのコメントを発してからは、急速に買い戻しが進むこととなった。

 前述した「米国経済の実状」という観点で最も重要なポイントは、やはり米雇用の底堅さである。実際、先週5日に発表された7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが事前予想の2倍以上となる前月比+52.8万人となった上、6月分も速報値の+37.2万人から+39.8万人に上昇修正されていた。
 この結果を受けて、市場では再び米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げ期待が一気に強まり、ドル/円は7月14日高値=139.39円から8月2日安値=130.39円までの下げに対する「半値戻し」の水準まで買い戻されることとなった。
 この半値戻しの水準は、前述した50日線が位置するところでもあり、今後、同線をクリアに上抜ける動きとなれば、次に21日移動平均線(21日線)が位置する136円前後の水準を試しに行く可能性が高いと見る。なお、仮に再び21日線を試す動きとなった場合には、日足の「遅行線」が再度「日々線」を上抜けるかどうかにも注目しておきたい。
 とまれ、前回想定した通り、ドル/円の過度な調整は一巡し、結果的に136円近辺までスルスルと値を戻す動きとなった。さらにもう一段の上値を試しに行くかどうかは、今週10日に発表される7月の米消費者物価指数(CPI)の結果が一つのカギを握る。その結果自体と言うよりも、その結果を市場がどう捉え、どう反応するかが肝心である。
 なにしろ、次の米連邦公開市場委員会(FOMC)開催までには、まだかなりの時間があるため、その間にどのような“憶測”が市場で巡らされるかは想定し切れない。場合によっては、指標結果のヘッドラインの数字だけを口実に、甚だ浅薄な見立てが一時的に市場で拡がる可能性もある。趨勢的な円安の流れはいまだ続いている可能性が高いと見られ、とかく円安になびきやすい状況が市場のムードを支配するケースもままあろう。

 一方、ユーロ/ドルは前回想定した通り、なおもレンジ内での値動きを続けている。そのレンジは「1.0200ドル処を軸とする1.0130-1.0270ドル処」となっており、今週も同様の値動きを続ける可能性が高いと見る。先週は、市場の一部で欧州中央銀行(ECB)の利上げについて「1.00%までの利上げすら疑問視され始めている」との声も聞かれたが、週末にかけて「そうした懐疑的な見方は行き過ぎ」との声が聞かれたことも事実で、結果的にユーロ/ドルは方向感の乏しい動きとなっている。
 ユーロ圏における足元のインフレ状況が看過できないレベルになっていることは確かだが、折からのエネルギー問題の影響に対する警戒が日増しに強まっていることも否定できない。よって、当面はレンジ上限付近での戻り売りを基本に臨みたいと考える。

(08月08日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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