先週明らかとなった4月の米消費者物価指数(CPI)は、事前の市場予想を下回る結果となった。ことに住居費・食品・エネルギーを除いたサービスインフレ、いわゆるスーパーコアの伸びが前月比0.4%と、前回の0.6%よりも大きく鈍化していたことは見逃せない。
米国のインフレ率は1-3月に想定を超える水準にあったが、どうやらここにきてようやく勢いが収まりはじめている模様である。実際、同時に発表された4月の米小売売上高は前月比で横ばいと、前月から大きく伸びが鈍化し、前月のデータも下方修正された。
前回更新分の本欄で「米国のスターバックスやマクドナルドなどの1-3月期決算の結果からも米消費マインドの低下傾向が見て取れる」と述べたが、やはり米家計は全体に物価と金利が高止まりしている状態に圧迫され続けており、財布の紐がジワジワと締まりはじめていると見て良いものと思われる。
たとえ、米労働市場が健全でなおかつ米株価が高止まりしていることによって米家計の支出余力が維持されているとはいえ、一方で住居費が高止まりしていたり、借り入れコストが高まっているうえ債務が徐々に膨れ上がったりしているとなれば、さすがに選択的支出が抑制されやすくなって行ってもおかしくはない。
総じて、米連邦準備制度理事会(FRB)が続けてきたインフレ抑制策、言わば景気抑制策ととることもできる政策舵取りの効果は着実に現れてきている。例えば、4月は中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の上昇、ガソリンの値上がりが見られていたわけで、それを考慮すると次の5月の米CPIは一段と伸びが鈍化する公算が大きい。
加えて、足元では米製造業の景況感もジワジワと悪化してきている。先週15日に発表された5月のニューヨーク連銀製造業景気指数はマイナス15.6と、予想のマイナス10.2を下回り、かなり弱めのものとなった。また、16日に発表された5月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数も4.5と、大方の予想であった8.0や前回実績の15.5を大幅に下回っていた。企業の借り入れコストが高止まりするなか、設備投資計画を積極的に進めにくい状況を鑑みれば、生産・製造活動が足元から鈍化するのも当然ということになるだろう。
こうしたことから、市場は米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ実施への期待を再び強めている。それでも、米連邦公開市場委員会(FOMC)の関係者らには相変わらずかタカ姿勢を堅持している向きが多く、ドル/円は高止まりの展開を続けている。
前回「156円台にしっかり乗せることとなれば、次に61.8%戻し=157円処の節目を試しに行く可能性もある」と述べたが、実際、14日には一時156.80円近辺まで上値を伸ばす動きを見せた。イエレン財務長官が日本政府・日銀による介入をけん制する発言を繰り返していたことも一因であったと思われる。
ただ、それ以降はどうにもこうにも上値が重い。シカゴIMM通貨先物ポジションの推移を見ると、5月7日時点の投機筋による円売りポジションは2週連続で減少した。
目下の市場では「日銀による国債買い入れオペの大幅な減額が6月の金融政策決定会合で決まる」との警戒感が燻っている。先週17日にはオペの金額が全年限で据え置かれたことで「日銀が正常化に慎重」との見方から円が売り戻されるという一幕もあったわけだが、それでも日本国債10年物の利回りが目立って低下したというわけではない。
一方、ユーロ/ドルは200日移動平均線(200日線)をクリアに上抜け、足元では1.09ドル処を試す動きとなっている。すでに、昨年12月高値から今年4月安値までの下げに対する半値戻しを達成しており、次に61.8%戻しの水準である1.0934ドル処や3月高値=1.0981ドル処などを試す動きとなるかどうかが注目される。同様にポンド/ドルのリバウンドも続いており、総じて当面のドルの上値は限られたものになりそうである。
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