先週のドル/円は、その前の週に発表された4月の米消費者物価指数(CPI)の結果を受けて一旦下げた分を埋め、さらに一段高い水準まで値を戻す動きとなった。
振り返ると、まず22日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容がドル買いを誘った。議事録は、参加メンバーらが「政策金利をより長期に高水準で維持することが望ましい」との見解で一致していたことに加えて、数人のメンバーが「必要ならさらなる引き締めに意欲」との見解を示していることを明らかにしていた。
また、23日に発表された5月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値が予想外に強い結果となったこともドルの押し上げに一役買った。
今回のPMIは、5月上旬の米企業活動が過去2年で最も速いペースで加速したことを示唆。仕入価格や販売価格指数も強い結果となり、それらはドル/円を157円台に引き上げるに十分なインパクトとなった。さらに、週末24日に発表された4月の米耐久財受注も想定超の強い結果を示し、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ実施への期待があらためて後退している。
ただ、24日に発表された5月の米ミシガン大学消費者態度指数(確報値)で、米消費者の1年先のインフレ期待が速報値から低下したという事実も見逃せない。
市場からは「5月のガソリン価格が低下傾向にあったことを反映している」との声が聞かれており、前回更新分の本欄でも述べた通り、このことは5月の米CPIで伸びが一段と鈍化している公算が大きいことを示唆していると考えることもできる。思えば、4月は中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の上昇、ガソリンの値上がりが見られていた。
同指数は、米消費者が高水準の物価と借り入れコストに苦しんでいることに加え、今後の労働市場に対して懸念を抱いていることも示している。思えば、先に発表された米ホームセンター大手のホーム・デポの2-4月期決算は6四半期連続の減収となり、インフレと高金利が住宅需要を抑制していることを浮き彫りにしていた。いずれ抑制される消費の範囲はさらに広がると見ておく必要があろう。
一方で、米ウォルマートの2-4月期は売上高の伸びが市場予想を上回った。その背景には、値引き(バリュー)品に惹きつけられる利用客が増えたことに加えて、これまでウォルマートに足を向けなかった高所得者層の利用が増えていることがある。それは、高所得者層までもが少し財布の紐を締め始めていることの証左と考えることもできるだろう。
なお、24日に総務省が発表した4月の消費者物価指数の結果は、2年8カ月連続で前年同月を上回るものとなった。4月は企業による価格改定が相次いだものの、昨年4月の数値が特殊要因によって高く出たことの反動による引き下げ部分もあった。
いずれにしても、5月以降は光熱費の上昇が加速するなどして、物価上昇の動きが一段と強まる公算が大きい。こうしたことも踏まえたうえで、日銀は6月13-14日に行う金融政策決定会合でどのような判断を下すのか、市場では様々に憶測が飛び交うこととなりそうである。ただし、その前に今週は31日に日銀の国債買い入れオペが予定されている。足元で新発10年国債の利回りが1%を超える動きとなるなか、買い入れ減額を見送らざるを得ないとするならば、目先は市場が円売りで反応する可能性もあるが、少し長い目では円を買い戻す動きが強まりやすい状況にあると個人的には見る。
ドル/円は157円処を軸とする156.50円処-157.50円処のレンジ内での値動きが基本になろう。先週末に対ドルでユーロが買い戻されており、目先的にユーロ/円が一段の上値を試せば、ドル/円も一旦はレンジ上限付近を試そう。ただし、あくまで戻り売りで臨みたい。なお、本日は日銀の植田総裁と内田副総裁による講演が予定されており、その内容に対する市場の反応も大いに気になる。
(05/27 07:00)
FX・CFD・証券取引・外国為替のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-