イエレン議長のタカ派発言を機に上に抜けたドル円でしたが、日足・一目均衡表先行スパンの雲上限(当時111.250円水準)に抑え込まれる形で反落しました。その後は“Brexit(英国のEU離脱)懸念”、“米商品投資顧問(CTA)”と見られる仕掛け的な株売り・円買い、“大型補正&財政出動”に対する言及しなかった安倍首相会見、佐藤日銀審議委員の「2%の物価目標の存在意義に疑問」発言からくる“日銀追加緩和期待の後退”、さらには「生産枠の上限設定の合意ならず」となった“OPEC(石油輸出国機構)総会”まで材料視され、リスク回避姿勢はドル円を108.50円水準まで押し下げました。
もっとも“OPEC総会”は事前の期待がそれほど高かったわけではなく、現時点で影響度はかなり低下してきています。“Brexit”も国民投票までは紆余曲折が予想され、現時点で一方向に決め打ちするのはリスクです。“米商品投資顧問(CTA)”の仕掛け的な動きも一応一服しており、“大型補正&財政出動”“日銀追加緩和期待”はスケジュールを考えるとこれからです。“ECB理事会&ドラギ総裁記者会見”も無風通過となったことで、マーケットの目はやはり米雇用統計⇒米早期利上げ観測の確認に向かいやすいと考えられます。
その米雇用統計、事前予想は「非農業部門雇用者数:+16.0万人」「失業率:4.9%」「時間当たり平均賃金:+0.2%、年率換算+2.5%」となっており、まずはここからの上振れ/下振れが注目されるところです。前哨戦のISM製造業景況指数は悪くなく、ADP雇用統計もまずまずでした。Brexit絡みで“6月利上げ”を疑問視する声も上がっていますが、現在の思惑はあくまでも“6月もしくは7月利上げ”であるだけに、“遅くとも7月までに利上げ”との思惑が後退しない限り、大勢に影響はないように感じます。逆にいえば“7月利上げも無理”と判断するには「かなりインパクトのあるネガティブサプライズ」が必要となってくるだけに、仮に予想を下回ったとしても“ドル売りは一時的”との期待は募ります。
もちろん結果次第ですので、「上回ればドル買い」「下回ればドル売り」が基本ということになります。それでも“7月利上げも無理”と判断するほどの「インパクトあるネガティブサプライズ(+10万人を大きく下回る等)」でもない限り、米早期利上げ観測の大勢には影響ないと見たいところです。ただし調査期間中に発生していた米通信大手・ベライゾンのストライキ(3万5100人規模)の影響が読み切れないだけに、“事前予想から大きくブレる(乖離する)”つまり“発表直後に大きく揺れ動く”可能性については、いつも以上に注意しておきたいところです。