揺れ動きは続いています。トランプ発言を機に台頭した“保護主義⇒リスク回避”への思惑は、ドルの上値を重くしています。“米3月利上げ観測の後退”もドル売りを促しており、上値に重くのしかかっています。
一方で、トランプ大統領が掲げる政策は、基本的に“インフレ上昇⇒金利上昇⇒ドル買い”を後押しするものが少なくありません。国境税も“保護主義”ばかりに目が向かいがちですが、「輸入を制限、輸出を促す」は“インフレ圧力の上昇”につながるものです。ドル安に転換すると、“米国債等への資金流入”が先細る可能性もあります。
後者にしても“3月利上げ観測が後退”したのは事実ですが、12月FOMCで示された“年3回利上げ”が崩れたわけではありません。“米景況感の認識”はまずまずであり、それを裏付けるように直近の米経済指標も好内容が続いています。
こうして明確な方向感が定まらない中、本日は米雇用統計が行われます。前哨戦のADP雇用統計はポジティブサプライズ(+24.6万人)であり、ISM製造業景況指数も大幅改善(総合指数は56.0へ上昇、構成項目である雇用指数は2014年8月以来の56.1)しています。今回の統計には含まれませんが、昨日発表された新規失業保険申請件数も好内容(24.6万件、4週平均も24.8万件)でした。前哨戦を見る限り、そう悪い数値が出るとは思えません。非農業部門雇用者数は事前予想(+17.5万人)を上回る可能性があり、時間当たり平均賃金が年率3%に伸びるようなことがあれば、再び“米3月利上げ観測”が再燃してもおかしくありません。
ただ気を付けておかなければならないのは、“利益確定売り⇒往って来い”といった展開が米雇用統計では少なくないことです。「好内容の非農業部門雇用者数で上昇しても、その他(時間当たり平均時給や労働参加率等)の下方修正が囃される」といった具合です。事前の期待値が高い場合には、“知ったら終い(しまい)”となる可能性もあります。ただし今回に関しては、“トランプ発言への警戒感”もあって、こちらはそれほど傾斜しているようには見えません。
テクニカル的には“11/9~12/15の38.2%押し(111.986円)割れ”と“短期的なダブルボトム(1/31安値:112.088円-昨日安値:112.061円)形成”が“綱引き”をしている格好であり、膠着しています。前者を割り込むと“109.924(11/9~12/15の50%押し、日足・一目均衡表先行スパン下限)”まで下値が広がる可能性が高まるため、虎視眈々と狙っている向きが少なからず存在します。一方で“ネックライン(2/1高値:113.948円)”を突破で“短期的なダブルボトム”が完成するだけに、後者に関しても相応数が存在しています。
もちろん結果次第の面はあり、米雇用統計の結果のみで“金利先高観”が膨らむわけでもありません。それでもここまで“ドル安・円高圧力”にさらされても、底割れせずに推移しているドル円。“決め打ち”することなく、逆に動いた場合の対応も想定しておく必要がありますが、 “知ったら終い”の可能性が小さい分だけ「通常よりも期待感は募る…?」。
直近の米雇用統計は大きな動きがなかなか見られず、「日米首脳会談まで膠着は続く」との声も聞こえてきますが、大きく動く展開(個人的には上方向)を期待したいところです。
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プロフィール
武市佳史(たけちよしふみ)
大阪府出身。ファイナンシャル・プランナー(AFP)。 日本におけるFX(外国為替証拠金取引)の草創期より業務に従事。現在ではマネーパートナーズのチーフアナリストとして、為替コラムの執筆やWebセミナーの講師を務めるだけでなく、日経CNBCを始めとする数々のメディアに出演・寄稿している。
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