ドルが下落する中で新興国通貨ではドルが上昇し新興国通貨は下落しています。特に下落が著しいのはトルコリラです。
ドルトルコリラは6月以降トルコ政府の規制も効果を上げ1ドル=6.85付近で非常に安定して推移していました。ところが7月27日以降ドル買いトルコリラの圧力が高まりつつありました。それでも1ドル=7リラ付近は防衛されていました。
リラ下落の背景にはトルコ中央銀行の介入能力の限界を市場が疑い始めたことにあります。トルコ政府はリラの暴落を防ぐために8月4日に翌日物レートを1050%まで引き上げましたが結局通貨防衛の効果はありませんでした。
トルコリラをショートにしている投資家は通常のスポット取引(直物)なら2日後に決済しなければならないのですがショートポジションを継続するにはスワップでトルコリラを借りてこなければなりません。そうなるとスワップの借入金利を1050%にすることでショートポジションの継続を断念させるために塚防衛のためにこのように借入金利を引き上げます。
8月4日に発表されたIMFのExternal Sector Report 2020によるとトルコの介入の能力に疑問を呈しています。
レポートによると2020年初頭にリラに対して圧力がかかっている。5月半ばの時点で外貨準備は220億米ドルに減少し純国際準備は150億米ドルに減少していると評価しています。
現状では対外債務と短期資金などに依存しているが、中期的には準備金を大幅に積み上げる必要があると評価しています。
このレポートが影響を与えたのかもしれませんが、IMFが介入資金の枯渇を指摘したことでドルトルコリラは5日に1ドル=7リラを完全に上抜けし6日は7.3リラまで上昇しています。
新興国通貨 四本値 フィボナッチリトレースメント ピボットポイント
【トルコリラの予想】
ドルトルコリラは6.9687オープン、7.2452クローズで3.97%の上昇、リラ円は15.122円オープン、14.48円クローズで4.25%の下落となりました。
ドルトルコリラは5月7日の高値7.2688を上抜けして7.3105付近まで上昇しました。7.2688まで上昇後の安値6.6875起点のフィボナッチ・エクステンション2.618倍が7.31でそのレベルがレジスタンスとして機能しています。ここが上抜けしてしまうと3.618倍は7.5リラになります。
ここまでくるとトルコ当局の通貨防衛姿勢が問われます。まずは政策金利の引き上げが必要です。これをエルドアン大統領の反対を押し切って決断できるかどうか。それと外貨準備が枯渇していますからスワップ協定等で介入資金を調達できるかどうか、ここら辺の通貨防衛策を講じなければリラの下落は止まらず、7.3を抜ければ7.5リラまで下落する可能性もあります。
TRY/JPY 日足BIDチャート
リラ円は5月7日の安値14.611円を下抜けしました。6月2日の高値16.239起点のフィボナッチ・エクステンション1.618倍が14.56付近で今回の安値とほぼ一致します。ここを下抜けすると2.618倍が13.81円付近となります。
戻りの目途はここまでサポートしていた14.90円付近が当面のレジスタンスとなるでしょう。
【南アランドの材料と予測】
ジョンズホプキンズ大学のHPによると南アフリカの感染者数は529,877名となり世界で5位となっています。感染拡大による経済減速が引き続き南アフリカの下落材料になっています。
ZAR/JPY 日足BIDチャート
ドルランドは17.0731オープン、17.548クローズで2.78%の上昇、ランド円は6.186円オープン、6.048円クローズで2.23%の下落となりました。
ドルランドは16.35付近がサポートし17.43付近に上昇しています。一目均衡表の雲の下限が17.10付近、上限が17.75付近に位置し当面このレンジが想定されます。
【メキシコペソの材料と予測】
ドルメキシコペソは22.2772オープン、22.3714クローズで0.42%の上昇、ペソ円は4.734円オープン、4.723円クローズで0.23%の下落となりました。
7月30日に発表された第2四半期のメキシコのGDPは前期比17.3%、前年同期比18.9%減少となり過去最大の落ち込みとなりました。メキシコ中央銀行の見通しでは今年のGDPは8.5~10.5%の減少を予測しています。
メキシコはインフレ率に対して政策金利が5%でまだ利下げ余地があり14日の政策金利発表が注目されます。
ドルメキシコペソは21.85付近がサポートし一目均衡表の雲の下限が22.53、6月の戻り高値の23.22付近が短期的なレジスタンスとなり22~23ペソのレンジが当面予想されます。
MXN/JPY 日足BIDチャート
ペソ円も4.62円付近がサポートとして機能しており一目均衡表の雲の上限が4.8円付近で4.62~4.8円のレンジが継続しています。
減速する経済、利下げ観測はペソの下落材料になりますが原油高などはサポート材料となりペソはレンジ内の動きが予想されます。