今から追いつくBrexit特集2019

3度目の議会採決の実施が危ぶまれる

2019/03/19
マネーパートナーズ

3月14日に離脱延期案の政府動議が可決され、その延期期限を巡って3月20日までにメイ首相の協定案の3度目の議会採決(第3回 Meaningful Vote)を行う予定であったブレグジットですが、ここにきて3度目の議会採決の実施そのものが危ぶまれています。
3月18日に英下院のバーコウ議長は「すでに2度も議会が否決した協定案を再び採決するには内容が大幅に異なるものでなければならない」と指摘し、さらに「これまでと同じ内容であれば採決は許可しない」と発言したからです。

もちろん、議会採決の中止が正式に決定したわけではありませんが、メイ首相が少ない時間で代替案を提出できる見込みは薄く、3度目の議会採決は行われないというのが市場の予測です。
仮に21日から開催されるEUサミットまでに採決が行われない、もしくは採決は行ったが代替案が否決されてしまった場合はEUサミットに離脱期限の延期を委ねることになります。
EU側は1年程度の長期の延期を求める見通しが強く、長期の延期を求められた際には以下の展開が予想されています。

1.メイ首相辞任・解散総選挙

英国やEUにとってメイ首相及び現政権のままではこう着状態を打破することができないため他の首相・政権に任せるという展開です。
最大野党・労働党は、いつでも内閣不信任案を提出することができ、ジェレミーコービン党首もその意思を示しています。
また、英与党・保守党のEU懐疑派議員はメイ首相が離脱を1年先送りにした場合は投票をボイコットすると警告しています。
さらに一部報道ではEU懐疑派によって構成されるユーロピアン・リサーチ・グループ(ERG)のメンバー約20人は院内幹事らに投票ストライキを行うと伝えたとされています。

2.国民投票のやり直し

その準備等に多くの日数を要するため、可能性の低かった国民投票のやり直しですが、長期の延期となった際には時間的猶予が与えられるため国民投票も視野に入ります。
メイ首相自身は国民投票のやり直しは一度目の国民投票を軽視することになるとの観点から否定的な立場を持っていますが、長期の延期が成されればこの可能性も十分に視野に入ります。

3.Soft Brexit(ソフトブレグジット)

Soft Brexitとは、関税同盟残留やノルウェープラス型と呼ばれるようなソフト路線で、協調を優先した穏健な離脱であり、経済的にはEUの市場とつながりを保ったままEUを離脱することを指します。
Soft Brexitが成されればイギリスは従来と同様に関税を考慮せずEU圏で経済活動ができます。

4.EU残留

「イギリスはEU加盟国の同意なしに一方的にブレグジットを取り消せる」とEUの最高裁にあたる欧州司法裁判所(ECJ)が判断しています。
そのため、こう着状態が続けば離脱撤回も選択肢に入ってきます。それ以外にも国民投票をやり直し、EU離脱を望まない国民が多ければ残留することになります。

5.ハードブレグジット(合意なき離脱)

3月13日に圧倒的大差で否決されたハードブレグジット(合意なき離脱)ですが、法的拘束力は無いためその可能性がゼロになったわけではありません。
メイ首相の協定案が否決されEUとの延期条件に合意できなければハードブレグジットへと進む展開も考えられます。


一方で第3回 Meaningful Voteが行われメイ首相の協定が可決された場合にはEU側に6月30日までの延期を申請すると予想されています。
延期期間が6月を越えてしまうと7月2日に開催される欧州議会への参加が必要になることが危惧されているからです。

EUが延期を6月30日までの承認した場合の展開としては上述のSoft Brexit(ソフトブレグジット)が有力視されています。
※このケースにおいてはEUが延期に合意しない可能性は低いと言われています。

Soft Brexit(ソフトブレグジット)は英国にメリットがあるだけでなくブレグジットによるEU側の混乱を抑えられるという点からEU側にも歓迎されるため現状ではこの展開を予想する見方が強いです。
しかし、6月30日までの延期が承認されたとしても、長期の延期が行われた場合の様な首相辞任・解散総選挙やハードブレグジット等の可能性も否定できません。
そのため、今後の展開次第では様々な結末が起こりうるためブレグジットを取り巻く環境は未だに複雑なままになっています。