FOMCで確度を高めたドル軟化への道が、雇用統計で止まった一週間となった。総括すれば
ドルは強いが、円もしぶとい。今日までの一週間でドル円の変動幅はほぼ3円(145.90円-148.89円)だったが、この間、FOMCでドル安、雇用統計でドル高、そして買われすぎた調整でドル低下と、三段階の展開であった。
ここからわかったことは、基調はドル高だが、根底には米国景気の後退不安からドルを買い続けていくことはできないという心理があると見られることだ。そのために、ドル売買の大きな判断材料であるドル金利動向に、どうしても目が行くということになる。そのいい例が昨日のドル円の動きであった。
先週末の雇用統計の強さで、ドル円は2円34銭ものドル上昇となった。その勢いは週をまたぎ月曜日もドルは続伸、148.89円の年初来高値を更新し、昨年11月27日以来のドル高値を付けた。雰囲気的には149円を超えて、150円にも届くかと言う気さえした。それほどまでに強い雇用統計の数字だった。
発表直後、現地のライブテレビで出た第一声は“Wow !!”、雇用者数は予想(+17万人)をはるかに超える+35.3万人、直前2か月の改定値を含めると実質+47.9万人、昨年1月の増加数(+48.2万人)に次ぐ大幅増であった。失業率も3.7%と予想(3.8%)より低く、かつインフレ指数(平均時給)も前月比+0.6%、前年比は+4,5%と、予想を大きく超える数字、まさにドル買い一色となってもおかしくない結果であった。
ところが、昨日は様相が違っていた。雇用統計の他にも、ISM景況感は良好(製造業、非製造業とも予想以上の改善)であり、ファンダメンタルズ面で何ら金利低下に結びつくものはなかった。またCBSテレビにおけるパウエル議長のインタビュー番組でも、利下げは急いでいないとのFOMC後の会見を踏襲しており、この面でも金利低下の引き金にはなっていない。にもかかわらず米金利は低下(例:10年国債利回りは前日終値4.16%から4.08%まで低下)した。結果のドル売り、円買いとなったのである。
ここに、米国景気後退不安がくすぶっていることで、いずれFRBも政策金利を下げることになるのでドルを買い切れないという心理が働いているのではないか、との考えもある。また金利低下の要因として、今後の米景気低下を見込む内外投資家からの長期債購入(=金利低下)が大量かつコンスタントに入っている可能性も考えられる。実際、多くの証券会社から盛んにドル長期債購入の提案が来ていることもその理由としている。
一方で、パウエル議長の胸の内も考えてみた。FOMCの声明文では利上げの可能性に関する文言を削除した。いわゆるフォワードガイダンスで中立に変更、しいて言えば、気持ち利下げバイアスを含ませてきたと読める。中にはハト派へ転換という論調もあるが、筆者はそうではなく、単に一旦檻に入っただけで、タカは消えたわけではない、と見ている。今後の経済指標、中でも来週13日の消費者物価指数がこの状況を判断する重要なデータとなる。
為替相場は経済政治動向など、変動要因を先取りして動くと言われるが、一つの要因の賞味期限は短くなっていると考えた方がよさそうだ。そこで、今後1週間の相場予想だが、ドル円はレンジとしては146-149円と先週より円安と予想する。ユーロドルは1.0650-1.0850と先週からユーロ安に、また対円では158.00-161.00円と先週と同じと予想。そして英ポンドドルは1.2500-1.2800と小幅ポンド安と予想する。
(2024/2/7、 小池正一郎)