思いもかけない米1月CPIであった。ヘッドラインの指数が全て市場予想を上回る結果に、NYからのライブ中継で出てきた言葉は“Not good news for FED!”画面のチャートは瞬間直角に上下した。これでFedの利下げはかなり遠のいた! との読みで、金利は急上昇、株(市場オープン前なので、先物相場)は急落(市場でいう“Dive”、飛び込むような下落)、ドル円もあっという間に150円超えとなった。この展開から、予想外のインフレの加速に驚いたことが如実にわかる。
まず、主要計数は下記の通りだが、特に、注目されたのが「コア前月比の上昇」であった。
前月比(予想)<12月> 年率 (予想)<12月>
総合 +0.3%(+0.2%)<+0.2%>、 +3.1%(+2.9%)<+3.4%>
コア +0.4%(+0.3%)<+0.3%>、 +3.9%(+3.7%)<+3.9%>
コア指数は、昨年7月以降+0.2~+0.3%のレンジで落ち着いていたが、サービス価格の低下が進んでおらず、FRBはもちろんのこと、市場も気にかけていた。それが今回は+0.4%に跳ね上がった。昨年5月(+0.4%)以来の伸び率だ。過去9カ月間、最も大きな伸び率(the fastest rate)との受け止めだ。この上昇に大きく反応したのが、前述の市場の慌てようだ。
一方コア年率ベースでもインフレ加速が明らかになった。昨年10月、11月と+4.0%が2カ月続き、12月は3.9%と低下、今回も予想は+3.7%と、2021年5月(+3.8%)以来の低水準を期待していた。それが前と変わりがなかったからだ。
それに加えて、インフレ加速と受け取られた数字が、足元の上昇である。過去3ヶ月の年率換算が+4.0%と前月の3.3%から大きく跳ね上がった。この大きな要因は住宅関連コストをはじめとするサービス価格の上昇が一向に下がってこないことだ。代表的な家賃についてみると、年率ベースでは+6.3%から6.2%に低下したが、前月比では+0.6%と前月(+0.4%)から上昇、また、足元も直近3ヶ月は年率+6.0%と前月の+5.7%から上昇している。
このような予想外の物価計数を受けて、市場はある意味当たり前のように反応した。しかし、中には、慎重に反応すべきとの意見も多い。パウエル議長が言っているデータとは、「単一データでなく複数のことだ」との考え方だ。政策当局者としては経済の趨勢を確認するという点で、データの積み重ねも求める。次回のFOMCは3月19-20日、その前に重要指標の雇用統計(3月8日)、CPI(3月12日)がある。もちろんそれ以外の経済指標も重要だ。明日15日は、小売売上高、鉱工業生産があり、16日は生産者物価に住宅着工が予定されている。CPIの数字が予想外であったことから、経済指標に対する反応度が一段ギアアップした状態である。
ところで、ドル円は今年も150円を超えてきた。3年連続である、2022年に151.94円、2023年は151.91円、そして今年2024年は現在の高値は150.88円である。筆者の持つ経験則に、「2度あることは3度ある」と言う言葉がある。介入警戒があるので簡単ではないかもしれないが、今の勢いではいずれ151円後半まで買われると予想している。問題はそのあとである。
これは二つの意味を持つ。一つは3度目のトライで越えたら151.90円近辺が次のレンジの最も安い水準となる(3度目の正直)。もう一つは、151円越えなければ、しばらくはその相場(今回は151円)に戻ってこない(3度さっぱり)。筆者の予想はまだない。ただ、重要な時期にさしかかっている、ということを認識している。この点では、介入の重さを日々意識している。
さて、今後1週間の相場予想だが、ドル円は149.00-151.50円と150円台は続くと予想する。ユーロドルは1.0600-1.0800とユーロは安値更新すると予想、また対円では159.00-162.00円とユーロ高を予想。そして英ポンドドルは1.2450-1.2700と小幅ポンド安と予想する。
(2024/2/14、 小池正一郎)