中央銀行金融政策決定会合が終わった。結果として、予想外ではあったがスイス中銀の0.25%利下げと日銀以外、主要国は据え置きを決めた。細かく言えば、今後の利下げ開始時期、利下げ幅等はそれぞれスタンスの違いは見え隠れするが、概ね事前予想通りの結果で、市場も素直に反応したと言ってよい。日米欧の株式市場で史上最高値更新が続いていることが、その証左であろう。ただ今週は年度末、四半期末、月末と重なることで神経質な展開が続いているが、4月明けると到来するであろう嵐を考えると、じっとはしていられない思いになる。
その大きな焦点がドル円である。執筆時点で151.92円を超え、既に再び34年ぶりの円安が目の前にきた。三度目の152円超えの挑戦となるが、株式相場と違って新高値ではない。ただ34年前を経験していない関係者にとっては、全く新しい相場になる。まさに未知の世界である。そこで「ハタ!」と考えるのではないだろうか?「ここまでくればバブルではないか?こんな高い所で買えない!では、どう立ち向かっていけばよいか?」と。
筆者は為替相場に関わって52年、今まで何回も新しい世界に遭遇し戦ってきた。資産運用の世界に戦いと言う言葉は適切ではないかもしれないが、筆者はいわば経験者。苦い経験もあるが、その後に役に立った知恵も多い。筆者が学んだ言葉を三つ紹介したい。まさに「未知の領域」に向き合っていくための処方箋とも言えよう。
最初は「長く続いたレンジを越えた時は、次のレンジの最安値である」と言う言葉である。逆に言えば、レンジを割り込んだ時は次のレンジの最高値とも言える。この言葉は筆者が米国で為替ディーラーとして勤務していた時に覚えたものだが、欧米では新しい局面に入ったらまず思い浮かべる言葉だ、と聞いた。
そのきっかけは、米国株(ダウ平均)の100年チャートにふれた時だった。1900年から上昇相場が続いているが、これまで弱気(ベア)相場4回(平均約14.5年)と強気(ブル)相場3回(平均17年、しかし過去二回は平均21年)が交互に発生している。現在は2013年3月に始まったブル相場進行中である。確かにいずれのケースも、長く続いたベア相場レンジを越えると一気に新しい相場となり、前のレンジには戻っていない。
そこで、ドル円はどうか振り返ってみた。期間は日本株が新値到達まで34年3ヶ月かかったことに対し、ドル円は少し短いが、チャートを見ると非常に似ている。結論は「新しい相場」ではないが、152円(正確には151.94円)は34年間越えていない相場だ。152円を超えた瞬間、それは新しいレンジのスタート値(最安値)となる。2022/10/21に付けたのが32年ぶりの円安水準の151.94円。その後2023/11/13に151.91円を付け、今年の最高値が今日の151.93円(執筆時点)。この水準を超えると1990年6月以来34年ぶりの円安となる。そこで二つ目の言葉が次だ。
「二度あることは三度ある。三度目を越えたら大相場、越えなければ反転してしばらくは戻らない」。筆者の経験では、短期間で発生する場合もあるし、今回のように3年がかりという長期のケースもある。今回151.94円を超えると三度目の正直となり、次は新しいレンジがスタートし大相場になる確率が高い。筆者が幾度と経験したアノマリーだ。もし3度さっぱりと152円で跳ね返されたら、今度は逆に140円割れに向かってドル安/円高の道を歩む。これがチャートが語っている次の相場だ、と読んだ。
そして、この時に発揮する言葉が「狩猟民族になれ」である。これは逆張りスタイルの「農耕民族」に対し、獲物を捕まえるまで(方向性が見つかるまで)追いかけていく順張りの手法である。海外で幾度となく遭遇した出来事で覚えた言葉だ。
そこで、今後1週間の相場予想だが、ドル円は介入の可能性も含めて、瞬間ドル下落の場面もあり、と考えて148.00-153円とやや広めの予想とする。ユーロドルは1.0750-1.0950とユーロ安に、対円では161.50-165.50円と広めに予想する。そして英ポンドドルは1.2500-1.2800とポンド安と予想する。
(2024/3/27、 小池正一郎)