先週末2日に発表された1月の米雇用統計は想定外に強い内容となった。1月のADP雇用統計で雇用者数の伸びが10.7万人という低水準に留まったことや、1日に発表された前週分の新規失業保険申請件数・失業保険継続受給者数が予想よりも弱い内容であったことから、多くの市場関係者はもっと弱めの結果を“想定”していた。ちなみに、1月は米国企業が8.2万人もの人員削減を実施したというデータもある。
まず、米労働省とADPの数値に差が生じるのは今に始まったことではないが、こうも大きく差が開くと、あらためて今後の数値の扱い方には一層慎重であらねばらないと思う。また、失業保険の新規申請件数や継続需給件数については、あくまで週ごとのデータであり、その趨勢的な変化を把握しておくことが肝要であるということを前提としたうえで、前月分の雇用指標より新しいデータであるという点も重要視しておきたい。
足元で失業状態にある向きが増えている点については、1月の雇用統計調査を行った時点(毎月12日を含む1週間)の米国で、多くの地域が厳冬に見舞われたことが関係している可能性もある。そのため、1月下旬以降にあらためて求職活動を始めた向きが増えたと見ることもできそうである。1月は前月比で横ばいだった「労働参加率」が、2月は上昇しているかどうかを1カ月後に確認することを怠りなくしたい。
なお、1月は「平均時給」についても少々目立った伸びが確認された。この点については、同月の「週平均労働時間」が前月の34.3時間から34.1時間に減少し、ほぼ4年ぶりの低水準になったこととの関わりが指摘されている。ことに、小売業と娯楽・ホスピタリティーという低賃金業種で労働時間が減少したことにより、労働時間で加重平均して弾き出される結果が強めに出たというわけである。
この労働時間の減少に関しては、米シカゴ連銀のグールズビー総裁も「ヘッドラインの数字が示唆するほど統計が強くはなかったことを示したもの」と指摘している。筆者も個人的には、今回の好結果を少し割り引いて見る必要があると考える。
とまれ、米雇用統計を受けて市場で一気にドル買い圧力が強まったことは紛れもない事実である。むろん、それは市場における米早期利下げ観測が一段と後退したことによる。当然のことながら、市場では「3月開始」の予測が消えかかっており、さらに「5月開始」と予測する向きもやや減っている模様。もちろん、先週行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過した時点で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見内容も手伝って「3月開始」のセンはほぼ消えていた。
そして、すでに市場の関心は本日(5日)日本時間9時にパウエル氏が出演する米CBSニュースの番組『60ミニッツ』に移っている。本稿が読者の目に触れる頃には、もはやその内容が明らかになっているかも知れないが、いずれにしても気になるのは株価の反応である。東京市場が先に反応することになるわけだが、仮に東京が反応薄であったとしても同日のNY市場の反応はしっかり確認したい。
そもそも、ここもとの米株価の上昇は米早期利下げ期待が演出したものであったはずである。だからこそ、パウエルFRB議長が早期利下げ期待を打ち消すようなコメントを発した31日の米株市場では、主要3指数が軒並み大幅安に見舞われたのである。
その意味で今後、米株価が一旦調整の場面を迎えるとするならば、やはりドルの一段の上値を追うことには慎重でありたい。ドル/円については、直近(19日)高値の148.81円処で上値を押さえられる可能性もあると見られる。一方、ユーロ/ドルについては1.08ドル割れのところで一旦買い戻される可能性もあるものと見ておきたい。
つまるところ、当面のドルの値動きについては、米株価の行方が一つのカギを握っているものと心得ておく必要がありそうだ。
(02/05 07:00)
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