先週5日、ユーロ/ドルが3月安値と5月安値を結ぶサポートラインをクリアに下抜ける動きとなり、前回更新分の本欄で想定したとおり、週末にかけては1.07ドル割れの水準を試す動きとなった。
欧州中央銀行(ECB)の定例理事会を今週14日に控え、いまだ市場では利上げの可能性に対する見方が半々に分かれている。それにも拘らず、ここまでユーロ安が進んできたことの意味は重い。仮に今回、ECBが利上げ実施の決定を下したとしても、それはユーロの買い材料にはなりにくく、結局のところ「据え置き」、「利上げ」のどちらに転んでもユーロの先行きには暗雲が漂うということになるのであろう。
実際、欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が先週7日に発表した第2・四半期のユーロ圏域内総生産(GDP)確報値は前期比0.1%増と、7月下旬に発表された速報値=同0.3%増を下回っていた。域内経済の成長はほぼ止まったと言わざるを得ない。7-9月期は再びマイナス成長に転落する恐れもあるとされ、こうした状況下でユーロを積極的に買い上がることにはかなりの無理がある。
目先は、ユーロ/ドルが1.07ドル処を明確に下抜けるかどうかを見定めたい。下抜ければ、差し当たり5月安値=1.0635ドル処や3月安値=1.0516ドル処を順に試す動きになりやすい。なお、前述した「両安値を結ぶサポートライン」というのは、三尊天井(ヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ)のネックラインと捉えることもでき、この転換保ち合いフォーメーションが既に完成したとするのであれば、少し長い目で1.05ドル割れの水準を試す動きとなってもおかしくはないと見る。
むろん、根強いドル買いの流れがなおも続いていることも事実である。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げが見送られるとの見方で市場はほぼ一致している模様だが、11月の会合では0.25%ポイントの利上げが行われると見る向きも少なくない。
「あっても年内にあと1回」の利上げでとりあえず打ち止めになったとしても、その後は「来年後半まで政策金利の水準を据え置く公算が大きい」と見る向きも多い。
また、いわゆる「量的引き締め(QT)」が今も粛々と行われ続けていることも忘れるわけにはいかない。引き締めの上限額は、財務省証券と政府機関債、住宅ローン担保証券(MBS)の合計で、8月までは月475億ドルであったが、9月以降は月950億ドルに倍増する。つまり、それだけ米国債利回りは上昇しやすくなる。
そう考えると、足元でドル/円が147円台後半の水準まで上値を伸ばしてきていることにも納得はいく。ただ、先週は5日以降週末まで幾度も147.80円台を試しながら、結局は148円手前のところで押し戻されるといった展開が続いた。
当然、政府・当局による介入への警戒もある。神田財務官による「あらゆる選択肢を排除せず」との発言は、あくまで口先介入に留まると見る向きも多い。ただ、日銀が具体的にレートチェックを行ったり、財務官が「『為替市場において』必要な措置をとる準備がある」といったより踏み込んだコメントを発したりした場合には、一時的にも市場に動揺が走る可能性もあり、一応は注意しておきたい。
また、米・日の株価の動きに対する目配りも怠ることはできない。米株価については、前述した「量的引き締め(QT)」の上限額拡大が今後の株価にダメージとなる可能性もないではない。そうでなくとも、先週あたりは一部のストラテジストらから米国株の先行きに悲観的な見解が幾つか聞かれていた。
日本株の行方については基本的に楽観できるものと考えるが、米株価が一時的にも大きく下げるような場面があれば、日本株も一旦は連れ安し、リスク回避の円買いが進むケースというのも念頭にはおいておきたい。
(09/11 07:00)
FX・CFD・証券取引・外国為替のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-