前週末の日銀会合をもって、先々週の欧州中央銀行(ECB)理事会を皮切りにスタートした“中銀ウィーク”が幕を閉じた。終わってみれば、やはりドル高の流れが一層強まったという印象が強く残る。ただ、それはあくまで短期目線でのことかもしれない。
少し振り返ると、ECB理事会の結果に対する市場の反応は想定していた通りで、追加利上げを実施したのにも拘らずユーロにネガティブなものとなった。ラガルドECB総裁は「我々は明らかに緩やかな低成長の時期にいる」と述べ、市場には「今回で利上げは打ち止め」との感も広がる。欧州委員会が、最新の経済見通しでドイツの23年の実質成長率をマイナス0.4%と前回から0.6ポイントも下方修正したことを考えれば無理もない。
また、先週21日に行われた英中銀金融政策委員会(MPC)において政策金利の据え置きが決まったことも印象的であったと言える。前日(20日)に発表された8月の英消費者物価指数(CPI)の結果においてコアインフレが顕著に鈍化傾向を示し、とくにサービスインフレが鈍化したことが大きかったと見られる。
前回のMPCまで14回連続で利上げを実施してきたことの効果が現れ始めていると見ることもでき、先週のポンド/ドルは21日以降、5月安値の1.2308ドルを下回る水準で弱含みの推移を続けることとなった。むろん、これもユーロ安の一因になった模様である。
とはいえ、ユーロ圏の景気下振れ懸念はすでに市場で十分に織り込まれていると見ることもでき、足元ではユーロ/ドルが1.06ドル処で下げ渋る動きも見られている。よって当面は、1.06ドル処が強い下値サポートとして機能するか、それとも同水準をクリアに下抜けるかが一つの焦点ということになる。仮に下抜ければ、今年3月安値=1.0516ドルや1月安値=1.0481ドルが中期的に意識されるようになる公算が大きい。
その意味では、今週28日に予定される9月の独消費者物価指数や29日に予定される9月のユーロ圏消費者物価指数の発表結果などにも大いに注目しておきたい。
一方でドル/円については、先週行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合の結果によって浮き彫りにされた双方のコントラストの鮮明さが基本強気のムードを演出している。ただ、その割に足元のドル買い・円売りの動きがやや抑制的であることも事実で、そろそろ材料が出尽くしつつあるといった感もないではない。
周知の通り、FOMC参加者らによる金利予想(ドット・プロット)の結果が「年内もう1回」の追加利上げの可能性を示しているのと同時に、市場でくすぶる「来年上半期には利下げ開始」という憶測を後退させることにつながっている。とはいえ、引き締め過ぎの弊害に対する警戒が足元で俄かに台頭してきていることも事実で、そのことは先週19日以降の米株価指数の大幅下落にも如実に表れている。
米株安の一因が米長期金利の上昇にあるのは確かだが、この金利上昇が米国経済の軟着陸シナリオの障害となり得ることも事実で、そのことは今後のドルの上値を押さえる一因となってもおかしくはない。
加えて、日銀が年内に金融緩和の追加修正に動くとの観測もくすぶり始めており、それは一段の円安を抑制する一因となる。過去の内田日銀副総裁の会見における発言などから、今回の会合における政策据え置きは確実視されていたが、次回以降は「全くの別物」と考えねばなるまい。実質賃金がプラスに転じるには物価の抑制が急務であり、一段の円安進行阻止がその一端であるとすれば、それも日銀の大事な「仕事」と言える。
9月の会合を終え、すでに次を見据える局面に突入。日銀側から何らかのアクションがあり得るとするなら、やはりドル/円の150円処や昨年10月高値水準は強い上値抵抗になり得ると見る。
(09/25 07:00)
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