少し振り返ると、今月6日に発表された9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)の伸びこそ予想を上回る結果となったものの、その伸びは主にパート勤務の増加によるもの(学生ローンの返済が再開したことも一因であると見られる)と後に判明し、平均時給の伸びも予想を下回った。さらに、失業率も若干のアップとなり、米雇用情勢は一頃までの強さを徐々に失いつつあるように思われる。
米10年債利回りは、米雇用統計の発表直後に一時4.88%台まで急上昇したが、これはNFPの予想外の伸びにアルゴが過敏に反応した結果と見ていいだろう。ほどなく上昇の勢いは失われ、一時は米雇用統計発表前に位置していた水準(4.75%前後)まで低下。その結果、同日の米株価指数はいずれも大幅に上昇しており、それが今回の米雇用統計に対する市場の総合的な評価であると考えればいいだろう。
先週は、米連邦準備制度理事会(FRB)関係者からハト派寄りの発言が、相次いで飛び出していたことも印象に残る。なかでも、10日にアトランタ連銀のボスティック総裁から発せられた「金利をこれ以上引き上げる必要があるとは思わない」との一言は市場に強く響いた模様で、後に米10年債利回りは一時4.5%台前半の水準まで低下した。
この時点において、市場では「米利上げサイクルはすでに終了も、当面は高金利の状態が続く」との見通しが幅を利かせるようになっていた。実際、短期金融市場では「次回のFOMCで現行政策を据え置く」と見る向きが9割を超える場面もあった。
サプライズだったのは、12日に発表された9月の米消費者物価指数(CPI)の結果に対して、市場が「インフレ鈍化は期待したほど進んでいない」と評価したことである。結果として、米10年債利回りは再び4.7%超の水準まで急上昇し、それまで市場に広がっていた「FRBの利上げサイクル終了観測」が少々揺らぐことにはなった。
これに対して、同日の米株価指数はいずれもネガティブに反応したが、米10年債利回りの水準自体が米雇用計発表前の水準に届くことはなく、市場の追加利上げ期待が再び高まるような雰囲気にはなっていない。その実、先週末にかけて短期金融市場の「政策金利据え置き予想」はあらためて9割を超える水準にまで上昇している。
その割に、ドルは足元でヤケに強いという印象であるが、それは言うまでもなく中東情勢の緊迫化によるもので、いわゆるリスク回避のドル買いであると見ていい。先週末にかけてスイスフランが全面高となったこともそれに符合する。
結果、ドル/円は一時149円台後半の水準まで上値を試すこととなったが、やはり150円に近付くほど介入警戒感が強まることも事実であり、基本的には売り上がりの姿勢で臨んでいる向きが多いと見られる。週末13日には、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が金利の据え置きをあらためて主張し、米10年債利回りが一時4.6%割れの水準まで低下したことも見逃せない事実である。
もちろん、中東情勢が絡んでくると当面の相場の読みは非常に困難となる。本邦実需勢が慌てて手当してくる可能性がある一方で、中東の緊張が緩めば一旦はドル売りが強まる可能性もないではない。当面は中東情勢の行方を慎重に見定めて行くことが肝要である。
一方で、ユーロ/ドルの反発は1.064ドル処で一旦頭打ち。週足ロウソクは先週の終値で再び62週移動平均線を下抜け、少々長めの上ヒゲを伴う陰線を描くこととなった。
13日に8月のユーロ圏鉱工業生産指数が発表され、前月比では0.6%の上昇となったものの前年同月比では5.1%低下した。これは、7-9月期のGDPがマイナス成長に陥るとの見方を支持するもので、このところ原油・天然ガス価格が強含みで推移していることに対する懸念もくすぶる。今後の中東情勢の行方にもよるが、基本ユーロ/ドルに対しては戻り売りの姿勢で臨みたい。
(10/16 07:00)
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