『外貨投資 転ばぬ先の智慧』の配信は、年内は本日が最後となります。 今年一年、ありがとうございました。 新年は1月15日(月)を予定しておりますので、来年もよろしくお願いいたします。
先週(19日に)通過した日銀金融政策決定会合の結果と総裁会見の内容は、いい意味で“かなり慎重”という印象であった。
前回更新分の本欄で「総裁の“説明”の仕方によっては円が一旦売り戻される可能性もないではない」と述べたが、実際、日銀会合通過後のドル/円は一時145円近辺まで値を戻す動きとなり、一旦行き過ぎた円高の修正が生じている。ちなみに、145円処というのは11月13日高値から12月14日安値までの下げに対する38.2%戻しの水準にあたり、ここは前回述べた「戻り売り」の一つの好機であったということになる。
今回、日銀総裁は件(くだん)の「チャレンジング」発言についての記者から質問に「自身の仕事への取り組みについて述べた」と“説明”したが、それが仮に本意であったとしても、やはり“不用意な一言であった”との責めは逃れられまい。
ただ、今回の総裁会見によって「日銀がマイナス金利解除に踏み切る時期は4月」との見方が市場で一層強まることになったのも事実である。
年明け1月の会合に対してもそれなりに警戒する向きはあろうが、日銀が政策見直しに踏み切るだけの“材料”が出揃う可能性は低いと見られ、警戒の度合いは緩めであろう。また、3月は金融機関などの決算期末直前ということもあってもともと動きにくい。
仮に「4月」ということであれば、それまでに市場が「マイナス金利解除とその後」を徐々に織り込む時間も十分にある。また、少々微妙なところもないではないものの、FRBが最初の利下げに踏み切るのは「その後」となる可能性が高いと見られる。
つまり、結果的に日銀はFRBよりも先に動く可能性が高い。
先週20日の日本時間未明、アトランタ連銀のボスティック総裁は講演で「来年に利下げを急ぐ必要性はない」との見解を示した。同総裁は「来年の後半に2回の利下げを実施するだろう」との予想を披露しており、少なくとも「3月から5~7回の利下げ」との市場の見方は少々行き過ぎ。やはり、来年前半は利下げに慎重な姿勢を続ける公算が大きいと見るのが適切であり、徐々に過度なドル売り圧力は解消されていくだろう。
とはいえ、市場の米早期利下げ期待がいまだ根強いことも事実である。先週21日に発表された第3四半期の米実質GDP(確報値)が改定値から下方に修正されたことや、22日に発表された11月の米PCEデフレータが前回実績と市場予想をともに下回ったことなども、市場の米早期利下げ期待を支持する格好となっている。
結果、21日のドル/円はやや長めの陰線を描き、重要な節目の一つである200日移動平均線(200日線)をいともあっさりと下抜けた。翌22日はやや切り返すも、200日線の手前で押し戻される格好となり、目下は同線が当面の上値抵抗として意識されやすい状況となっている。
一方で、当面のドル/円の下値の目安となり得るのは、一つに62週移動平均線(62週線、現在は140.34円に位置)ということになろう。仮に同線を下抜けると、次に一目均衡表の週足「雲」上限が現在139.58円処に控える。ここは今年1月安値から直近高値までの半値押しの水準でもあり、一つの重要な節目として頭に置いておきたい。
とまれ、この年末年始は「市場の米早期利下げ期待が現状より多少なりとも後退するか否か」が一つのポイント。目下は対ドルでユーロも強含みとなっているが、そろそろ上げ一服となってもおかしくはない。あらためてドルに見直し買いが入れば、ドル/円にも一定の戻り余地が生じるだろう。むろん、そこでも基本は戻り売りと考えておきたい。
年末にあたり、本欄に対する今年のご愛顧に感謝申し上げるとともに、来年も読者の皆様に幸多かれと心より祈念する。良いお年を。
(12/25 07:00)