先週のドル/円は、23日と24日に一旦147円割れの水準まで下押す場面があったものの、その後は両日ともに買い戻しが優勢となり、148円台まで持ち直す動きとなった。それだけ、足元では米経済の底堅さを再評価するムードが色濃くなっている。
既知の通り、先週24日に発表された1月の米PMI統計(購買担当者指数)は、米国の製造業・サービス業を合わせた総合PMIが7ヵ月ぶりの高水準となり、市場からは「FOMCが金利を『より高くより長く』維持する可能性が高まった」との声も聞かれた。
また、25日に発表された10-12月期の米実質国内総生産(GDP・速報値)が前期比年率3.3%増の高成長となったこともあり、米利下げの早期開始に対するモチベーションは一頃よりも低下していると市場は受け止めている模様。米インフレ率の伸びは着実に鈍化しているものと思われるが、その結果として米株価が高止まりしていることもあり、なにも慌てて米利下げに踏み切る必要もないだろうといったムードが、今のところは拡がりやすくなっているのだろう。
ドル/円が147円割れの水準を試す場面にあっては、一目均衡表(日足)の「雲」上限水準や「転換線」が当面の下値サポートとして意識されやすい。転換線については、昨年12月半ばから年明けまで上値抵抗として機能していたが、1月3日以降は同線が下値サポートとして機能しているとの感が強い。逆に言うと、今後は「この転換線が下向きに転じるかどうか」を慎重に見定めて行くことが肝要と思われる。
また、足元でユーロ/ドルがやや軟調に推移していることもドル強気の流れを支えている。欧州中央銀行(ECB)は先週25日の理事会で3会合連続の政策金利据え置きを決めたが、理事会後の記者会見でラガルド総裁が放った幾つかのコメントが、市場の利下げ期待を高めることにつながっている。結果、短期金融市場ではECBの利下げ開始時期について「6月」を有力視する一方で、次第に「4月」との観測も強まってきている。一部では、ECB関係者の話として「3月に利下げ議論を開始する用意がある」との報道も伝わってはいた。
ただ、目下の市場の織り込みは「行き過ぎ」と考える向きが少なくないことも事実。ラガルド氏は会見で「利下げはまだ議論されていない」と強調し、1月のダボス会議では「夏以降」の可能性に言及していた。同氏が重視している賃金データについては、欧州統計局が四半期ごとに発表する「労働コスト」が最も包括的であるとされ、その1―3月期のデータは6月中旬にようやく明らかとなる。
今のところ、ユーロ/ドルは辛うじて200日移動平均線に下支えされており、週明け以降は一旦買い戻しが入る可能性があると見る向きも少なくない。ドル/円と同様、ユーロ/ドルも足元では日足の「転換線」が一つの節目として意識されやすくなっており、同線を上抜ける動きとなれば、一旦はリバウンドの動きが強まると見ておきたい。
なお、日本では先週24日に経団連主催の「労使フォーラム」が開かれ、2024年の春季労使交渉が本格的に始まった。大企業を中心に高い賃上げの意向を早期に示すムードが強まっており、日々関連の報道が伝わるごとに日銀の出方に関する市場の関心も強まりやすくなろう。また、今週31日には日銀の「主な意見」が公表され、1月会合後に一時的にも強まった円買いの動きが蒸し返される可能性もないではない。
また、なおも米・日株価がドル/円相場に及ぼす影響は大きい。先週末にかけて、日経平均株価はやや調整色を強め、注目の米フィラデルフィア半導体株(SOX)指数も下落した。株価が調整すると円の先物売りが巻き戻される可能性もあり、やはり個人的にはドル/円に戻り売りを仕掛けるタイミングを狙いたい。
(01/29 08:00)
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