中央銀行ウイークも残すところ、米(本日11/1)英(明日11/2)の両国のみとなった。10月は、3日の豪州からスタートしたが、先進国では昨日の日本まですべて政策金利は据え置きとなった。先週25日のカナダは予想通り5%で据え置き、26日の欧州中央銀行(ECB)は、11会合ぶりに据え置きを決定した。いよいよ金利は「高く(Higher)」から、どのくらい高止まりが続くか、という「長く(Longer)」に焦点を当てる段階に入ってきたといえよう。
特にECBは今後は、むしろ政策金利を下げる時期が注目されることになるだろう。31日に発表になった、ユーロ圏インフレ率(10月消費者物価指数)は年率2.9%と前月の4.3%から大きく低下、2年3か月ぶりの低水準となったからである。もちろん、国によってばらつきがあるし、コア(エネルギー・食品を除く)が4.2%と高いままなので、引き下げは簡単なことではないが、潮の流れを変化させるデータの一つになると今後の動向に注目している。
ところで、昨日のドル円はまるでYCC柔軟化を決めた7月28日の相場展開を見ているようであった。円大幅安の再現である。7月28日の3.12円の円安に続き、昨日31日には、2.69円の円安であった。それも時間帯もよく似ている。植田総裁の記者会見が終了するのを待っていたかのように、欧州市場が先導する形で円は下げ幅を高めていった。先月(9月28日~10月27日)介入実績がゼロとの財務省の発表も円売りを後押しした。
結果、クロス(ドル以外の他通貨)取引で、円は独歩安。特に対ユーロで10月31日に160.85円を付け2008年8月以来の高値更新となった。ちなみにリスク回避行動は続いており金買いも進行、10月27日には2,009.38ドル(1オンス)に上昇、次のターゲットは2,018ドルと考えている。
さて、今後のポイントは、日本のドル売り介入がいつ、どこで入るかである。今年の円の安値は昨年2022年10月21日以来となる151.72円、そして昨年の円安値は151.94円、既に昨年の介入ポイントを上回っており、いつ介入が入ってもおかしくない。そこで、財務省の神田財務官の主な発言(「」部分)の行間を読んで、真意を推測(<>内)してみたい。
「介入の準備はスタンバイだ」<あとは水準が来ることを待つだけだ>
「過度の変動」<一日に2円以上動くのは投機だ>
「ファンダメンタルと合っていないような動き」<これに対する行動はG7でも認められていることだ>
「あらゆる手段を排除せずに」<この口先介入、委託介入、他通貨介入など>
「適切な行動をとる」<先手を打って、“介入”する。投機には断固として対抗する。これがメッセージだ>
介入が成功するためには「ビックリ」「協調」「継続」が必要と言われている。まず本日の米国FRBの決定を待つ。そのうえで、ドル高要因でなく、円の要因だけで昨年の円安水準を超え152円に円安が進んだ場合に、市場に「介入水準が上がった(より円安)!」と思わせ、一気に介入でびっくりさせるという考えでないか、と想定している。
そこで、今後1週間のイベントだが、FOMCの他に、今週金曜日11月3日には、米国の雇用統計が発表になる。ヘッドラインの市場予想は、NFP(非農業部門雇用者数)が17万人(前月33.6万人)、失業率は前月と同じ3.8%。この水準より大きな下振れとなれば金利安、ドル安と想定しているが、同じか上振れで、雇用環境は悪くないとの評価でドルは現状水準以上になると予想している。
そこで相場予想としては、ドル円は幅広いが148.50-152.50円とする。ユーロドルはユーロは軟調に推移するとみて1.0450-1.0700、対円は158.50-161.50円とユーロ高を予想する。また英ポンドドルは、利上げを行うが1.2000-1.2300とポンド安と予想する。
(2023/11/1、 小池正一郎)