本日(20日)、ついにトランプ次期米大統領の就任式が執り行われる。トランプ氏は先週14日、就任式の日に「関税などの徴収を行う『対外歳入庁(ERS)』を新設する」と公表しており、まずは新政権発足の瞬間から関税の引き上げに向けた強い意欲を示してくるものと見られている。
トランプ氏は、過去に「就任初日のみは独裁者になる」という主旨の発言をしたことがあり、大統領の権限のみで政策を執行できる大統領令を初日に多数発行する可能性が高いと見られる。追加関税や不法移民の送還、「メキシコ残留」政策など、その中身については市場で大方想定されてきているが、インパクト強めの“トランプ節”が再び炸裂するとなれば、一旦は市場でリスク回避ムードが色濃くなる可能性もあろう。
その意味からしても、今後徐々に米国でインフレ圧力が高まっていくとの見方には基本的に変わりがない。ただ、先週は12月の米生産者物価指数(PPI)や12月の米消費者物価指数(CPI)の結果が事前の市場予想を下回ったことや、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーラー理事が「年内にデータが順調に推移すれば、3回か4回の利下げが行われる可能性もある」と発言したことなどによって、米インフレ再燃への警戒を強めていた市場に一定の安心感が広がったことも事実ではある。
実際、短期金融市場ではFRBによる「7月利下げ」の期待が復活し、市場の一部からは「3月利下げが再び選択肢として浮上する可能性さえある」との声も聞かれていた。結果、14日に一時4.8%台に乗せる場面もあった米10年債利回りだが、週末にかけては幾度か4.6%を下回る場面も見られていた。
ただし、先週発表された昨年12月分の米インフレ指数が「あくまで過去のもの」であって、トランプ氏就任前のものであるということも再認識しておく必要はあろう。
とまれ、先週はドル/円が一時155円割れの水準まで下値を試す動きを見せる場面があり、それは一つに弱めの米インフレ指数が米金利の低下を誘い、ドル売りの流れに加担したことも大きく関わったと考えていいだろう。
しかし、やはり何より大きかったのは、他でもなく「日銀が今週23-24日に開く金融政策決定会合で追加利上げ実施の決定を下す」との見方が市場で俄かに支配的なものとなったことが大きかった。周知のとおり、そこには先週14日に神奈川県金融経済懇談会に出席した氷見野日銀副総裁の発言と、15日に全国地方銀行協会が開いた会合に臨んだ植田日銀総裁の発言が大きく関わった。
前回(6日)更新分の本欄で、筆者は14日の会合に関して「今回はどのようなメッセージが(日銀サイドから)市場に届けられるのか大いに注目」と述べたが、案の定、日銀は1月会合前のタイミングで、これまでの“コミュニケーション障害”の修正を試みる対応に打って出たのである。なお、17日の夕刻に日経電子版は「政策を決める9人の政策委員の過半が追加利上げを支持する見通しであることが、複数の関係者への取材で分かった」とスクープしている。
こうしたことから、ドル/円は15日に21日移動平均線(21日線)や一目均衡表(日足)の転換線をクリアに下抜け、先週の週足ロウソクは一時的にも一目均衡表の週足「雲」の上限水準を試す動きとなった。ただ、先週の動きのなかで日銀の利上げについては「ほぼ織り込み」となった感が強いことも否定はできない。
一方で、なおもユーロ/ドルは下向きの21日線に上値をガッチリ押さえられた格好となっており、目先的にリバウンドの動きが強まる気配はなかなか感じにくい。今月30日に控える欧州中央銀行(ECB)の定例理事会では利下げ継続の公算が大きいと見られており、基本的に当面のドルの下値は自ずと限られるものと見ておく必要もあろう。
(01/20 07:00)
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