先週発表された7月の米求人・労働異動調査(JOLTS)の結果や8月の米雇用統計の結果を見るに、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ実施の決定は見送られる公算が大きくなったようにも思われる。
JOLTSについては、7月の米求人件数が882.7万人と事前予想の950万人を大幅に下回ったことも注目されるが、それ以上に「自発的離職者」の数が5月、6月に比べて大幅に減少していた点を重要視したい。自発的離職の減少は、より好い条件で新たな職に就くことが難しくなりつつあることを示していると考えられ、いよいよ米労働市場の情勢に変化の片鱗が見られ始めた可能性もあると見られる。
また、8月の米雇用統計の結果を見ても、米労働市場において潮流の変化が生じていると感じるデータが少なくなかった。失業率が上昇したことに目が向けられやすいが、それは労働参加率上昇の結果でもある。むしろ、その労働参加率の上昇こそが何より見逃せない状況変化であると再認識したい。
なかでも「プライムエイジ」と称される25-54歳の働き盛りの層で労働参加率が過去最高水準に迫る勢いであるという。近頃は従業員の削減に踏み出す企業もあるようで、少なくとも一頃よりは職に就くことが容易ではなくなってきているものと推察される。それは結果的に賃金上率の鈍化につながりやすく、実際に8月の平均時給の伸びは前月比で0.2%と前回の0.4%よりも鈍化していた。
もっとも、米国経済がなおも底堅く推移している状況に変わりはないようで、先週1日に発表された8月の米製造業PMI改定値や8月の米ISM製造業景況指数などは、いずれも予想より強めで、市場のソフトランディングシナリオを強化する内容であった。
そのため、米雇用統計の結果を受けて一旦144円台半ばあたりまで大きく値を下げたドル/円も、一気に切り返して大きく持ち直す動きに転じた。かなりボラタイルな動きとなった印象であるが、その背景には米10年債利回りの急上昇があったわけで、このところの市場は米国債利回りの動きに過度に敏感になっているようにも感じられる。
先週1日の米10年債利回りは一時4.20%付近まで上昇する場面があり、結果的にドル/円が21日移動平均線(21日線)を下抜けたままの状態で週末を迎えずに済んだという点も見逃せない。来週13日に8月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えていることもあり、少なくともそれまではドル/円の下値も限られるものと思われる。
個人的には、146.30円処を軸とした145.30-147.30円のレンジ内で推移するものと想定し、先週の終値水準でもある146.30円処を上抜けてきた場合は、147.30円何処を目安に一旦ロングでエントリーしたいと考える。もちろん、21日線をクリアに下抜けるような動きとなれば話は別で、その場合は7月安値から8月高値までの上げに対する38.2%押し=143.50円処まで目線を下げることが必要になると考える。
一方、ユーロ/ドルについては前回更新分の本欄で「今年3月安値と5月安値を結ぶサポートラインが伸びてきていることも要チェック」と述べたが、実際、先週は同ラインを下支えとして一旦1.0945ドル処まで値を戻す場面も見られていた。
ただ、週末にかけては再び同ラインを試すような動きとなり、週明け以降、同ラインをクリアに下抜ける格好となるかどうかが注目される。下抜けた場合には、前回も述べたように一応は1.07ドル割れの水準を試すものと想定しておきたい。また、ここで切り返した場合には、ひとまず1.0850ドル処までの戻りを試す動きになると見る。
来週14日に欧州中央銀行(ECB)の定例理事会を控えていることから、それを通過するまでは利上げ期待がユーロを支える可能性もある。ただ、ECBによる利上げがそろそろ最終段階を迎えていると考えられることも事実で、ユーロの上値は自ずと限られると心得ておくことも必要になるだろう。
(09/04 07:00)
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