足元で米2年債と米10年債の利回り格差=逆イールドが急速に縮小しており、先週末に向けては過去1年で最小となった。これは、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利が据え置かれることが確実視される一方、高金利長期化バイアスが強まっていることを如実に表している。
既知のとおり、米10年債利回りは先週一時5%台に乗せる動きを見せ、NYダウ平均は18日から20日に3日続落、合計で870ドル余りの下落となった。市場では「米10年債利回りが5%を超えてくると株式から債券への資金シフトが加速する」と見る向きが多い模様であるが、仮にそうなれば米国債の価格が強含みとなり、結果、利回りの上昇余地は限られるということにもなるということは再認識しておきたい。
また、先週19日にNYエコノミッククラブで講演したパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「利回り上昇は利上げの必要性低下を意味し得る」との見解を示しており、総じて米10年債利回りの上昇がそろそろピークに近付いているといった感もないではない。
足元の米金利上昇はドル/円を再び150円近辺まで持ち上げる一因となっているが、150円手前のところではガッチリと上値が押さえられたままという状況を続けている。150円台を積極的に攻めるためのきっかけが欲しいところなのだろうが、本邦当局による介入への警戒が拭い切れないことも事実であろう。
また、先週17日の欧州時間に「日銀の24年度の物価見通しは2%以上に上方修正される公算が大きい」と伝わるなどしたことで、市場において日銀の「次の出方」に対する関心が一層強まり始めていることも軽視できないものと思われる。
今月末に控える日銀金融政策決定会合において議論される経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、23年度と24年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の見通しが上方修正される公算は「確かに大きい」と考えられる。
日本経済新聞が実施したエコノミスト調査によると、来年4月のマイナス金利解除を予想する向きが多かったという。やはり、来年の春季労使交渉(賃上げ)の行方を見定めることが必要ということになるのだろうが、それよりも前の段階で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正が行われる可能性もないではない。なかには、今月末の日銀会合で長期金利の誘導目標上限を1.5%にまで拡大する可能性があると見る向きもあった。つまるところ、日銀会合について「今しばらくは無風で通過」と決めてかかることには慎重であらねばなるまい。
なお、市場には「10-12月以降に米国景気が顕著に減速傾向を強める」と見る向きも少なくはない。11月に入って10月分の各種ハードデータが出てくると、それが実感されるようになる可能性もある。すでに、足元では住宅ローンの申請件数が約28年ぶりの低水準に落ち込んでおり、10月からは学生ローンの返済猶予終了の影響も各所に現れてくるだろう。財政政策の効果が長く続いていたことの反応も出てくるだろうし、今年の米年末商戦について「一段と盛り上がる」と見る向きは少数派である。
つまるところ、今しばらくドル/円は積極的に手掛けにくい。中東情勢の行方や米債務膨張への懸念などによって、米10年債利回りが5%超、ドル/円が150円超の水準に浮上する可能性もないではないが、それらは長い目でドル売り材料に転じる可能性もある。
個人的にはユーロ/ドルと短期で向き合う算段で臨んでおり、目下は1.055ドル処を軸とした1.045ドル-1.065ドルのレンジ内での値動きを想定して向き合うことを基本としている。今週26日の欧州中央銀行(ECB)理事会では政策金利を据え置くことが確実視されているが、あらためてタカ派姿勢の温存方針を強調してくる可能性は十分にあり、市場の反応を注視しておきたい。
(10/23 08:00)
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