いよいよ本日(30日)から、注目の日銀金融政策決定会合が行われる。
市場では今回公表される経済・物価情勢の展望(展望リポート)において「23年度と24年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の見通しが上方修正される公算が大きい」との見方が強くあり、一部では「それに伴って長期金利の誘導目標上限の再引き上げ(=YCCの再修正)が行われる」といった見方も燻っている。先週末にかけて日本国債10年物の利回りが一時0.89%台まで大きく上昇したという事実も見逃せない。
むろん、なかには「YCCの修正は7月に行われたばかりであり、現段階での再修正の見込みは薄い」と見る向きもあり、仮に日銀が政策変更を行わなかった場合は、あらためて円売りの流れが強まる可能性もないではない。
先週末27日は、ドル/円が一時149円台半ばの水準まで下押すなど全体に円安一服の展開となった。ただ、それは週末を前にしたポジション調整で米長期金利が上昇一服となったことに因る部分もあると見られ、中東情勢の緊迫化を受けた「リスク回避の円買い」の一言で片づけてしまうことには慎重でありたい。
なにしろ、先週26日のアジア時間にはドル/円が一時150.78円まで上値を伸ばす場面があったのである。そこに至る過程において、市場では当局の介入に対する市場の警戒が緩んでいる(150円台乗せへのハードルが下がっている)と感じられるところもあった。実際、先週25日までの値動きは、決して「投機的な」ものでも「ファンダメンタルズから外れた」ものでもなかった。そのため市場の警戒も次第に緩むことになったのであろうが、それで本当に緊張感を緩めてしまっていいものだろうか。
当局は「水準で判断するわけではない」としているが、それを鵜呑みにはできない。ひとまずは、31日に発表される「外国為替平衡操作の実施状況」を確認し、市場の反応を見たい。むろん、過去最低の支持率に落ち込んだ岸田政権にとっては、やはりドル/円の150円超えを手放しで受け入れることも難しい。「なんとか、足元の円安と物価の上昇傾向に歯止めをかけて国民をひと安心させたい」という政権の悲痛な叫びが、日銀の関係者らの耳にはまったく届いていないということもないのではないか。
もちろん、市場でドル買いの動きが徐々に緩んでくる可能性はある。先週26日に発表された第3四半期の米GDP速報値は4.9%と、事前予想の4.3%や前回実績の2.1%を大きく上回る驚きの伸びを示したが、市場では米国債利回りが低下してドル売りの反応が見られた。米GDPと併せて発表された米個人消費支出(PEC)コアデフレータが弱めの結果であったことが主な要因と考えられる。
なお、27日に発表された9月の米個人消費支出は予想を大きく上回る伸びを示していたが、消費の伸びが所得の伸びを遥かに上回っていることから考えれば、消費者が支出のために貯蓄を取り崩していることは明らかで、いずれ消費の伸びが顕著に減退するときが訪れるものと推察できる。前回も述べたように、やはり市場の「10-12月以降に米国景気は減速傾向を強める」との見方には一定の説得力があると言えよう。
今週は、所謂「中銀ウィーク」で「月替わり」、かつ重要指標の発表も相次ぐことから、言うまでもなく極めて慎重な投資判断と厳格なポジション管理が求められる。その意味で今種もドル/円は手掛けにくく、個人的にはユーロ/ドルの値動きと対峙したいと考える。
先週のユーロ/ドルの週足は、最終的に62週移動平均線を上抜けることができず、週末27日には一旦強含みとなるものの、結局のところ1.06ドル処で失速して押し戻されたとの印象が強く残る。よって、基本的には1.0560ドル処を軸とした1.0520-1.0600ドルのレンジ内で推移すると見ておきたい。
(10/30 07:00)
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