米国の主要株価指数は、先週末時点で3週連続の週足陽線を描いた。もちろん、その間に米長期金利が基本的に低下傾向を辿ったということが大きい。実際、先月(10月)末にかけて4.9%台を幾度か試す動きを見せていた米10年債利回りが、先週末17日には一時4.3%前後の水準まで低下する場面もあった。
やはり、先週発表された10月の米消費者物価指数(CPI)や米生産者物価指数(PPI)が予想を大きく下回る弱い結果を示したことが何より大きかった。ある程度予想されていたことではあったのだが、それにも拘らず米CPIの発表後には想定以上に強いドル売りの反応が見られていた。それは、市場があらためて「米利上げサイクルの終了見通し」に自信を深めた結果であろうと思われる。
これまで、米連邦準備制度理事会(FRB)の関係者らは、市場が米国債に対する買い安心感(利回り低下期待)を強めるごとに、そうした態度を戒めるかのごとくタカ派色の“旗”を振りかざしてきた。そのために、市場は目下の状況が「利上げサイクル終了から利下げサイクル開始への転換点」であるという見立てに自信が持てないでいた。
つい最近も、FRBのパウエル議長は「米金融政策が十分制約的とは確信持てず」などと述べ、米長期金利の過度な低下によって政策効果が減退してしまう事態を回避すべく必死の構えを見せていたため、市場が「利上げサイクル終了」に自信を持てないでいたのも無理はない。その意味で、今回の米CPIや米PPIの結果は揺らいでいた市場の自信を確信に変えるほどのインパクトになったものと見られる。
なお、先週発表された10月の米小売売上高の結果に対しては、市場がドルを一旦買い戻す反応を見せた。その結果が想定よりも若干ながら強めに出たことは事実だが、その詳細を見ると印象が少々異なってくることもまた事実である。
実のところ、今回はパーソナルケアや食料品の店舗売上が増加する一方で、家具店や自動車ディーラーは大きく減少していた。つまり、日用品は生活の質を維持するレベルを保っているが、耐久財にまではカネが回らなくなってきている。
前回更新分でも触れたように、米国のカード延滞率は12年ぶりの高水準に達しており、今のところ堅調に見える米消費が“借金”で支えられていることは明らかである。およそ4000万人もが利用している学生ローンの返済が10月から再開し、学生ローンと自動車ローンを同時に抱える向きは非常に厳しい状況に陥っていると伝わる。さらに、コロナ禍で蓄えられた“過剰貯蓄”はそろそろ枯渇するものと考えられ、米消費の今後の持続力に疑問を抱くのは自然なことであると思われる。
とまれ、ドル/円は先週末にかけて150円処をやや拍子抜けするぐらいあっさりと下抜け、そこに集中していたストップをも巻き込む形で一時は149.20円処まで大きく下押す場面もあった。むろん、感謝祭を今週に控えて米国債を買い戻す動きや、積み上がっていた円売りポジションを解消する動きが出たということもあろう。
理由はともあれ、節目の150円を下回ったまま週末を迎えたことや、17日の日足ロウソクが21日移動平均線をクリアに下抜けたことのインパクトはそれなりに強い。
一方で、ユーロ/ドルは週末にかけて1.09ドル台に乗せる動きとなり、いまや200日移動平均線が下値を支える格好となっている。もちろん、一段の上値を追うには自ずと限界もあると思われ、そろそろ戻り売りのチャンスを見定めたいところではある。
ただ、ここは前回も述べたとおり、ユーロ/円やポンド/円などクロス円に戻り売りを仕掛けるタイミングをじっくり見定めることの方が、戦略的には有効であろうと個人的には考える。
(11/20 07:00)
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