先週の外国為替市場では、米早期利下げ観測の後退と日銀の早期政策修正(マイナス金利解除)観測の後退が同時に進んだ。一頃の行き過ぎが“修正”されるのは当然のことだが、正直、ここまでドラスティックなものになると一体誰が想定しただろう。なにしろ、昨年末に一時3.8%割れの水準に沈んだ米10年債利回りが、足元では一時的にも4.2%に迫る水準まで持ち直してきているのである。おそらく、それはそれで少々行き過ぎということになるのではないか。
少なくとも、今年に入って米長期金利がジワジワと上昇を続けているのにも拘らず、米株価が強気の推移を続けていることは事実であり、なんと先週19日にはNYダウ平均とS&P500指数がともに史上最高値を更新するに至った。
昨年10月下旬から年末にかけてNYダウ平均が15%超の値上がりを見たのは、その間に米10年債利回りが5%近辺から3.8%前後の水準まで大きく低下したことを背景(一因)としていたはず。その意味からすれば、年明け以降の米金利と米株価の動きは逆相関の関係になっている。ある意味、このところの米株市場はイイトコロ取りの様相を呈しているとも言えなくはない。
年明けから米金利が強含みで推移しているのにも拘らず、足元ではフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)までもが史上最高値を更新してきた。もちろん、それはエヌビディアやAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)などの業績と株価推移が抜きん出て好調に推移していることに因るわけであるが、その結果として日本の半導体関連銘柄を中心としたハイテク株全般の人気がかつてないほどに高まっていることも見逃せない。
ハイテク株の影響を受けやすい日経平均株価も非常に強い基調を続けており、先週19日も前日終値比で497円の上昇。この日本株高を受けて、同日の東証の取引時間終了(大引け)時にドル/円は一時的にも148.80円近辺まで上値を試すこととなった。
つまり、日本株高は一つの円売り材料となっているわけで、そうであるとするならば今後の日本株の行方がドル/円、クロス円の値動きにも一定の影響を及ぼすということになろう。目下のところ、日経平均株価については3万6000円処に一定の上値抵抗が意識される状況となっており、同水準をクリアに上抜けて行くかどうかが当面の大きな焦点の一つということになりそうである。
もちろん、日本株が一段の上値を試すためには、その条件の一つとして米国株の堅調推移が続くことも重要であり、つまるところ当面は米・日の株価推移が為替相場の行方を想定するうえで普段以上に重要なカギを握ることとなる。むろん、その意味では今週からいよいよ本格化する米・日の主要企業による決算発表の結果と市場の反応からも目が離せないということになろう。ちなみに、今週は米国でネットフリックスやテキサス・インスツルメンツ、インテルなどの決算が発表され、台湾TSMCと関係が深い蘭ASMLの決算にも注目が集まろう。また、国内ではニデックやディスコ、ファナック、信越化学工業の決算なども予定されている。いずれの決算結果についてもおしなべて好結果が見込まれているが、市場では「出たらしまい」の反応が見られる可能性もないではない。
ドル/円の148円台に対して、個人的には高値警戒感を禁じ得ない。19日の日足ロウソクがやや長めの上ヒゲを伴う格好となったことも軽視はできないと考える。
なんといっても、まずは週明けから行われる日銀金融政策決定会合の結果と日銀総裁会見の内容に対する市場の反応を静観したい。22日に今年の賃上げ動向のヒントとなる「政労使会合」が開催されることも一つのポイント、また、日銀総裁会見は本人が意図しないところで市場が小さな言葉尻を捉えて、それを格好の材料として扱うこともあるため注意しておきたい。
(01/22 07:00)
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