潮の流れは変わったか! 23日のNY債券市場で異変が起こった。10年債が5%を超えた後、利回りは急低下、終値は4.848%、一日で約0.2%の急落となった。この動きを受けて、ドル円はピッタリ張り付いていた149.99円からはがれた。ドルの低下傾向が表に出てきたようだ。このまま148円台に入れば1週間ぶりの円高となる。
ところで、ドル円は149円台で固定相場に戻ったような値動きが続いている。18日からの4営業日で変動幅はわずか51銭。介入警戒を頭に150円への攻防の結果ともいえるが、ドルを買い進めて150円台での相場展開を見通している立場にとっては、すこし目論見が異なってきたのではないだろうか。それだけ、米国10年債利回りが突然(と筆者には見えたが)低下したこの債券市場の動きは特筆される出来事だ。
その要因を調べてみると、報道には既に出ているが、債券弱気派の宗旨替えに端を発しているとわかった。すなわち、インフレ率の高止まりの中での底堅い景気を背景に、金利高はまだ続くとの見通しで債券売りを進めていた大手の投資家が、そろそろ天井だと判断、弱気派の旗を下げ、強気派に転換したとの観測である。その判断で債券売りポジションの縮小、あるいは債券の大量の買いで、ポジションをひっくり返したと見られる。10年債が5%超えとなったことで、相場でいう「目標に達した。材料出尽くし」となった。24日になっても利回り低下が続いている。この流れは来週のFOMC(11/1)まで続くであろう。
さて25日のカナダから中央銀行ウィークが始まる。26日は欧州中央銀行(ECB)、来週30-31日には日本銀行(BOJ)、そして最後に米連邦準備制度理事会(FRB)のFOMCが10月31日-11月1日に控えている。欧米はこれまでの引き上げ段階から据え置きを経て、利下げ局面に変わろうとしている。まず今月の会合だが、市場では、ECB、FRBとも据え置きとの見方が優勢である。そのうえで、両行ともその道筋をどのように示すか、その判断基準は何か、市場にどのようなメッセージ(フォワードガイダンス)を与えるか、大きく注目されている。
一方日銀は、これまで石のように全く動かなかった姿勢をどこから変えていくか、注目される。日本10年債の金利は、上限許容範囲である1%に近付いてきている。政策変更を示す有力手段であるマイナス金利については、対象残高は小さく、緩和政策のシンボリックな位置づけにあると考え、変更するとしたら最終段階で、今回は変更はないと予想している。ただ物価上昇は早急に低下することは考えにくいとの判断で、目標物価上昇率の引き上げには踏みきる可能性がある、この意味で、今回発表になる展望レポートと経済物価見通しが、今まで以上に注目される。
そこで最初に注目したいのが、カナダ中銀の動向である。これまでも先進国(特に米国)の先行指標といわれてきたことがあったが、過去2回はまさにそのいい例となっている。前回9月はカナダ(6日)が据え置きを決めたのち米FRB(20日)は据え置きと決めたが、7月はカナダが0.25% 利上げ後、米国も利上げした。今年前半もカナダが据え置きで先行した後、米国が11会合ぶりに据え置いたとの流れもある。その意味で今回の決定が注目されるが、予想は据え置きである。もし万が一、引き下げとなると、米国FOMCへの見方も変わってくるかもしれない。下げないにしても、引き上げの確率は大きく低下すると推測されるからだ。
それにしても、有事のスイス買い、金買いはまだ続いている。スイスフラン円は168.42円と史上最高値をまたまた更新(10/20)、さらに金は2,000ドル(1オンス)目前だ。加えて、ユーロ円も159.92円(10/24)と、今年8/30の高値を上回り2008年8月以来の高値となった。米国が絡む地政学的リスクが残る限り、この勢いはまだまだ衰えることはないと考えている。
そこで、今後1週間の相場予想だが、ドル円は変わらず148.00-150.50円とする。ユーロドルはECBの政策金利が米国と同じように「高く、長く」続くとの見方が出ていることから、据え置きであってもユーロが堅調に推移すると見て1.0550-1.0750、対円は158.00-160.50円とユーロ高を予想する。また英ポンドドルは、1.2100-1.2350とポンド高を予想する。
(2023/10/25、 小池正一郎)