10月の中央銀行決定シリーズが11月2日のイングランド銀行(Bank of England)で終わった。結果は、主要行全て据え置き。市場では、米FOMCでのパウエル議長発言(11月1日)から市場は天井圏だ、との判断で長期債利回りは急低下。ドル円も149円台に下落し、株は反騰した。さらに週末の雇用統計で予想を下回る雇用者数の伸びに、景気後退の兆しが見えてきた、との空気も漂い始めた。
このような雰囲気で、昨日11月7日の豪州中央銀行(Reserve Bank of Australia)から新たな中央銀行シリーズが始まった。さあ、引き締めの集大成だ、と2023年の幕引きを考えていた人たちもいたに違いない。ところが、結果は据え置きでなく、0.25%の利上げであった。一部には利上げの予想もあったが、その理由はインフレの高止まり、消費者物価指数(年率)が8月の5.2%から、9月は5.6%へ上昇していた。
年末最後の中央銀行シリーズの真打ちは12月12~13日の米FOMCで、1ヶ月以上先のことであるが、市場での駆け引きは既に始まっている。さっそく昨日は米国FRB高官からタカ派発言が伝わってきた。今回は、これから押さえておかなければならない勘所を整理してみたい。
最初に米国から伝わってきたFRB関係者からの発言を含めて、当局者の腹のうちを筆者なりに整理してみた。
① 第3四半期GDPの4.9%は決してバックミラーの姿ではない。この流れが第4四半期も続く可能性があり、予断なくフォローする。
② 中長期国債の利回りが上昇していないのは、財務省発表の国債入札予定金額が市場の予想金額より少なかったことで、ファンダメンタルズから正当化される水準ではない。
③ 低調な雇用統計も、UAWのストの影響が大きい、事実、製造業分野がこれまでの年間増加数を打ち消すような大きな減少であり、ストが終息に向かっていることで、来月は改善すると期待できる。
④ 前回FOMC(11/1)の据え置きは、利上げ打ち止めを決めたからでなく、12月のFOMCに向けて、イ)これまでの利上げが経済のどの程度浸透しているか、ロ)金利を上げないことにより、消費行動や住宅などの借入行動にどのような影響が出ているか、ハ)それが物価にどのように結びついているか、などのデータを収集し実態把握を行うためである。
⑤ カレンダー的にも、12月のFOMCまでに消費者物価指数が2回(11/14と12/12)あり、雇用情勢もわかる(12/8)。
⑥ 決して利上げ打ち止めは前提になっていない。集められたデータをベースに、アヘッドオブカーブ(見えない先を読む)で、目標のインフレ率を2%に戻るために何ができるか考え、政策を決定、実行することになる。
これが筆者が考えるFRBの政策決定への姿勢である。とはいうものの、筆者が考えている金融市場のメインシナリオは、「ドル金利はすぐには下がらないが、上昇余地は徐々に狭まってきて、2024年第2四半期からは低下に転じる。一方、日銀は利上げ方向に軌道修正していくことで、ドル円は天井圏に入っている。日本政府の介入警戒も重い。そこで、152円超えが長く定着することはない」である。
では、今後どのように市場に向かっていけばよいか? このような不透明な時の答えはただ一つ。「市場に休みはない。常に市場に参加していることによって、潮の流れがわかる。そうすることによって長期的な方向性を得ることもできる」である。
そこで相場予想だが、ドル円は先週より幅を縮小して148.75-152.25円とする。ユーロドルはユーロは堅調に推移すると見て1.0500-1.0750、対円は159.00-161.50円とユーロ高を予想する。なお、ユーロ円は本日161.05円まで上昇、2008年以来の高値を更新、さらに上昇する余地があると見ている。また英ポンドドルも1.2100-1.2400とポンド高と予想する。
(2023/11/8、 小池正一郎)