ドル円は先週まで5週連続して陰線(ドル安)となっているが、12月14日の140.94円を底値に反転中である。今週NY市場終値が142円以下にならなければ、ドル下落は短期的にはひとまず終了と考えられる。昨日の日銀金融政策決定会合で12月の主要なイベントは終了した。今月は残すところ、実質2日間、経済指標と共に、地政学的リスク(特に中東、エネルギー価格)へ注目度を高めていきたい。
まず、日銀会合の結果であるが、事前予想通り超緩和政策は現状維持であった。声明文は、主要項目<長短金利操作、資産買い入れ方針、将来へのコミット(いわゆるフォワード・ガイダンス)>は前回10月31日と99%同じ表現、表面的にはまさに「山、動かず」であった。残りの1%は、「長短金利操作の運用」において、前回は「賛成8反対1(中村委員)」だったが、今回は「全員一致」となった点で、むしろ後退感さえ感じられる内容であった。案の定、発表直後、円は142.60円から143.50円へ90銭の急落。これまでと同じような相場展開となった。
そして、植田総裁の記者会見が始まった(15:30 143.65円、終了16:30 143.81円)。個人的に知りたいことは(市場の興味でもあったと思うが)、12月7日の「年末年始はチャレンジング」発言の真意であった。今回の決定内容から12月会合で決定することではなかったことが自明の理となったので、逆のその言葉をなぜ使ったかに興味がわいた。今後の総裁発言の裏(心理、行間)を深堀するために重要と考えたからであった。総裁の説明は、一定の意味や時期を示すのでなく、総裁の仕事としての姿勢、心構えについて述べたもの、との答えであった。
ただ、植田総裁自身が、これまでの在任約8か月の経験から、「総裁発言の市場への影響度について考えが及ばないことはあり得ない」と、筆者は確信している。黒田シーリング(発言によって市場で意識され節目となる為替相場で、黒田前総裁時に示現)の例もある。考えようによっては、とても賢い市場とのコミュニケーションかもしれない。今後の発言にはよくよく考えを巡らせていきたい。
さて、記者会見中、一瞬相場が動いた場面があった。会見の中盤、「出口戦略」の質問が出た時であった。するすると144円に上昇した。しかし総裁の答えは「常に考えている」、とだけ。具体的なことへの言葉も示唆もなかったことで、すぐに反落。しかし、ここから相場は総裁の言葉には敏感に反応するということを改めて認識した。
その後欧米市場では、円安が進行、夕方には144.96円までドル円が上昇した。しかしそこが天井、現在は143.50円近辺。今回は変更がなくても、いずれ、早ければ1月の会合には展望レポートもあり、政策変更が行われる確率がますます高まってきたことは間違いない。基調円高は継続する、すなわちドル円は「Sell on rally(上がって売り、戻り売り)」の姿勢継続と考えている。
今年2023年の市場は実質今週で終わり、通常月末に発表される経済指標も今週に前倒しになる。今週の米国指標と市場予想は次のとおりである。
20日・中古住宅販売(3,770千戸、先月3,790千戸)、21日・第3四半期GDP確報(+5.2%、 先月改訂値+5.2%)、21日・失業保険新規申請件数(21.5万件、前週20.2万件)、22日・個人消費支出(PCE)価格指数(年率・総合+2.8%、先月+3.0%)(コア+3.4%、先月+3.5%)。
日本でも、重要な指標となる消費者物価指数が22日朝に発表になる。予想は、総合(予想3.3%、先月実績+3.3%、以下同じ)、コア(+2.5%、+2.9%)、コアコア(+3.8%、+4.0%)である。
さて、そこで今後1週間の相場予想だが、ドル円は横ばいの142.500-145.50円と予想、ユーロドルはECBがFRBに比べハト派姿勢でなかったことから1.0800-1.1050とユーロ高に、また対円では154.50-158.50円と小幅ユーロ高を予想、そして英ポンドドルは先週と同じ1.2450-1.2750とポンドを予想する。
(2023/12/20、 小池正一郎)