ドル円の上昇が止まらない。12/1以来の148円台に近づいている。今月に入って、米国景気も衰えていない。ドルの強さは筆者の予想以上である。昨日はFRBウォラー理事のタカ派発言でドル金利も上昇、日米金利差も拡大している。市場の空気は150円を視野に入れ出ているようにも感じる。来週からは日銀を皮切りに、欧米中央銀行の政策決定会合が続くが、このままドル高が進むのか、天井を打つのか、考えてみたい。
まず、「ドル円の相場予想は日米金利差から」との基本は維持と、筆者は考えている。現在のドル高はこの公式が経済指標や政策当局者の発言により強化された結果である。年末から昨日まで、米ドル金利は10年債の終値ベースで3.866%から4.054%まで0.188%の上昇。一方日本の10年債利回りは、同じ期間で0.628%から0.608%に低下、金利差は3.238%から3.446%に拡大した。ドル円が上昇するのは自然の流れであろう。
この背景には、まず米国経済の強さがある。雇用統計、消費者物価(CPI)とも予想以上の強さが示された。特にCPIではエネルギー価格の上昇が目立つ。11月まで-2.5%、-2.4%と2カ月続いた前月比マイナスが、前月12月分は+0.4%と一転して上昇。前年比でも11月の-5.4%から12月は-2.0%へのマイナス幅を縮めた。ガソリンの大幅な上昇(前月比で、-6.0%→+0.2%、前年比が-8.9%→-1.9%)が要因としてあげられた。
加えてFRBが重視する家賃(年率)も、前月の+6.5%から+6.2%に低下したとはいえ、年率6%台を維持したままだった。ウォラー理事の発言も首肯できる。そして今日から実体経済を示す指標が米国で相次いで発表になる。主なもので、今日17日は、ベージュブック(地区連銀経済報告)のほか、小売売上高(前月比:前月+0.3%、市場予想+0.4%)、鉱工業生産(前月比:前月+0.2%、予想-0.1%)がある。消費が衰えていないかどうか、注目したい。
18日からは住宅関連の指標が出てくる。住宅着工は天候の影響が懸念され、前月の156万戸(年率)から142.5万戸に減少の予想であり、19日には、住宅販売ではメインとなる中古住宅販売がある。こちらは、前月(年率382万戸)とほぼ同じと予想されている。季節的に例年は減少傾向が出るが、今年はどの程度の落ち込みになるか、合わせて注目したい
一方日本サイドに目を転じると、来週22-23日は日銀の政策決定会合がある。植田総裁が「春闘の結果が判断材料」と繰り返し発言していることから、今回は現状維持と予想されるが、今月は展望レポートの中間評価と経済見通し ー特に、物価の評価、見通しー が注目される。今日日銀から12月企業物価指数が発表された。前年比変わらずで2021年2月(-0.9%)以来の低水準だった(前月は+0.3%)。1年前(2022年12月)の+10.6%(年率)から、エネルギー価格の低下や政府の補助により低下が続いていたが、これが消費者物価にどのような影響を与えるかが問題である。
その消費者物価が今週金曜日19日に、統計局から発表になる。市場予想(年率)は総合が+2.6%(前月+2.8%、都区部速報+2,4%)、コア(除く:生鮮食品)は+2.3%(前月+2.5%、都区部+2.1%)。コアコア(除く:生鮮食品とエネルギー)は+3.7%(前月+3.8%、都区部+3.5%)である。いずれも低下が予想されている(注:都区部予想とは、1/9統計局発表の12月中旬速報値)が、低下が明らかになると、特に海外参加者を中心として円売りを仕掛ける可能性が出てくると予想される。ただ、筆者は150円は通過点でなく、大きな壁になっていると見ている。
さて、今後1週間の相場予想だが、ドル円は145.80-148.80円と予想。ユーロドルは1.0700-1.1000と小幅低下を予想。また対円では158.50-161.50円とユーロ高を予想、そして英ポンドドルは1.2500-1.2800と小幅低下と予想する。
(2024/1/17、 小池正一郎)