ドル円は150円挟みの攻防が続いている、背景にあるのは、日米の金融政策変更見通しへの不明瞭さが継続していることだ。日本政府の介入警戒があるのでドルを買い進めるには慎重、しかし一方で日米の金利差でドル優位の状況は変わらず、キャリーコストを考えると、短期で利益を出すための円買いを積極的に進めることもできない。
とすれば、買い持ちはそのままで、ドル売りは要因が出たときに短期勝負、とせざるを得ない。当面は変動要因となる大きなイベント待ちがしばらく続くだろう。しかし好調な米国経済に後退感が起これば、ドル売り要因が出てくるとも考えられる。
さてFRBが重視するデータは物価と雇用であるが、今月残っているのは、29日(木)の個人消費支出(PCE)価格指数である。これはFRBが消費者物価(CPI)より重きを置いていると言われる物価指数であり、先月は、年率は低下(コアが+2.9%←+3.2%、但し総合は2.6%で横ばい)したが、前月比では総合・コアとも上昇(総合+0.2%←-0.1%、コアは+0.2%←+0.1%)しており、CPIの予想外の上昇を受けてPCEも同じような上昇傾向を示すかが、大きな注目材料になっている。
これ以外で筆者が注目している米国経済指標は以下の通りである(カッコ内は重要度、<>は前月実績)。
21日(◎)1月30-31日開催分FOMC議事要旨<据え置き>
―利下げに対する議論(注目データ、利下げ時期、利下げ幅など)の内容
―ハト派(利下げ積極派)がタカ派(利下げ慎重派)より少なければドル金利は高止まりとなり、ドル買い再燃の可能性
22日(〇)中古住宅販売件数<378万戸、-1.0%>
―先週発表の住宅着工件数が、大幅低下(133.1万戸、-14.8%)となっており、住宅指標の中でもシェアの高い当指標の動向に注目
22日(◎)S&Pグローバル製造業景況感指数(PMI)速報<50.3、12月47.9>
―15カ月ぶりの高水準が続くかがポイント
26日(△)新築住宅販売件数<66.4万戸、+8.0%>
27日(〇)コンファレンスボード(CB)消費者信頼感指数<114.8>
―16日発表の小売売上高が予想外に低下(前月比-0.8%、予想は-0.2%)で、米消費に失速感がでてきた。米国の大手調査機関CBの調査結果に注目
28日(〇)第4四半期GDP改訂値<速報は+3.3%>
そして前述のように29日のPCE発表を迎える。
一方、日本でも27日に重要な指標、全国消費者物価指数(CPI)が発表される。先行指標となる東京都区部の消費者物価指数(1月中旬速報値、総務省統計局発表)は低下が続いている。いずれも前年比で、総合指数は+1.6%(12月+2.4%)、コア(生鮮食品を除く総合)も+1.6%(12月+2.1%)であった。全国12月のCPI(年率)は総合が+2.6%、コアが+2.3%だったが、3月18-19日の日銀決定会合における一つの判断資料にもなり、注目しておきたい。
ところで、現在、投機家・投資家の目は、為替市場でなく株式市場に向いているようだ。海外の投機家・投資家からの円株購入は円買い(外貨売り)が一つの手段だが、ドル円相場にはその流れが表れていない。これは、米国市場には日本投資家からのドル買いが、そして新NISAによる外貨投資が予想以上に高まっていることが要因とも考えられる。円買いへの転換には、米国要因(景気後退、金利低下、政治混乱など)が必要だが、為替相場へ影響を及ぼすほどの出来事が起こるかどうか、注視していきたい。
さて、今後1週間の相場予想だが、ドル円は先週と同じく149.00-151.50円と150円台は続くと予想する。ユーロドルは1.0700-1.0900、また対円では161.50-164.00円とユーロ高を予想。そして英ポンドドルは先週と同じく1.2450-1.2700と予想する。
(2024/2/21、 小池正一郎)